通常小説

□憧憬は泡沫に
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俺は守と二人きりでサッカーをしている。
ただ守がキラキラした眩しい笑顔を俺に惜し気もなく振り撒くからそれを直視していられずわざと目を合わせないんだけど。


臆病だなぁ…って心の中では自分を叱責しつつ守がボールに目を奪われてる瞬間だけはしっかりとその姿を目に焼き付けようと必死になって…


……何をしていても守は格好いいけどやっぱりサッカーをしている時の守は別格。本当に格好いい。
きっとこの世界のどこを探したって守以上にイイ男なんていないんだろうね。
俺にサッカーをする楽しさ教えてくれた人。
初めて話をした時からずっと好きなんだ、守。



守には中々伝わらないけどね。


でもいいんだ。
守とこうして二人でサッカーをして、君が笑っていてくれるならそれだけで満足だよ。









………嘘ついちゃった。


本当はね、出来るなら君にもっと近付きたいし、触れてみたい。
その力強い腕に抱かれてキスとかされてみたい。

望みは尽きない。



ごめんね、守。

君に関しては溢れだす気持ちを押さえることが出来なくて、またこうして君に近付いてる。

本当は俺やエイリア学園の存在自体が君にとって重荷になってることは分かってるのに。


それでもこうして、こうして俺に笑いかけてくれる守を見ていると目の前が段々ぼやけてくるよ。

おかしいな…
守の笑顔がよく見えないなんて普段の俺だったらそんな勿体ないこと絶対に有り得ないのに。



「ヒロト、こっちこっち!」


守が俺を呼ぶ。

あぁ、君がずっとそうやって俺の名前だけを呼んで、俺だけを見続けてくれたらどんなにいいだろう……


嬉しくて自然と緩む口元とは裏腹に、頬を伝っていくものを拭うことなく俺は守の方へと駆け出した。






―――だってこれは、甘く繊細な、まるで砂糖菓子のような夢だから















きっと目醒めれば、
そこにあるのは見馴れた天井


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