通常小説

□苛烈な兄御
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最近ボクは染岡君と付き合い始めた。
最初の頃はボクの気持ちを理解できないと言ってとまどっていた染岡君だったけどボクが毎日しつこいくらいアプローチをしていたらだんだんとそれを受け入れてくれるようになったんだ。
ああ、ボクはなんて幸せ者なんだろう。


「染岡君、好きだよ」
「ばっ…ばかなこと言ってねーで練習しろよっ!!」

染岡君のことに関してボクはいつだって自分の欲求に忠実だった。伝えたければいくらでも好きと告げたし、抱き締めたいと思えばすぐにそれを実行した。
そのたびに小麦色の肌を傍目に見ても分かるくらいに赤く染める染岡君の表情が可愛い過ぎてもっと見せつけたくなるんだよね。

――え?誰に対して?
決まってるじゃないか、そんなの。
ああ、ボクはなんて酷い奴なんだろう。


ある日染岡君とキスをした。
ボクが触れれば染岡君は大げさなくらいに反応して、それが愛しくてしょうがなかった。

「震えてるの?染岡君ってほんと純情だよね」
「しし仕方ねーだろっ、初めてだったんだからっ!!」
「初めてだったの?フフッ…ボクが染岡君の初めてなんて嬉しいなあ」

好きな人がまだ誰も知らない、それってとても理想的だよね。
だってこれからボクだけをその身体に教え込んで、ボクだけの色に心を染めることだってできるんだから。

しかもそんな陶酔に浸っていたボクに染岡君は自ら近付いてきて「これからもお前以外とはしねーから」なんて言ってきたんだ。
もう…どうして染岡君はこんなにボクのツボなのかな。
当然これからもボク以外の人間が染岡君に触れることなんて許さないのにわざわざそんなことを言ってくれてさ。

―あ、そうそうアツヤ、もちろん君だって例外じゃないから。
だって君はボクじゃないもの。
ああ、ボクはなんて醜い男なんだろう。
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