ついにユニも手に入れた。
それなのに、僕の望んだ新世界は築かれなかった。

「うーん。やっぱり君のせいかな」

膝の上から僕をじっと見上げてくる、大きく潤んだ瞳。
唇を軽く吸ってやると、嬉しそうにぎゅっと抱きついてくる。
ああ、なんて可愛いんだろう。
…なんて、僕らしくもないけれど。

だけど、僕はこの可愛い生き物に夢中だった。

「ユニのように、君も正気じゃないとダメなんだろうね。ボンゴレ10代目」

この男を懐柔するために、あらゆる手段を使って壊してやった。
自分だけのものにしてやりたかった。
だけどそうして手に入れた結果、僕はずっと望んでいたものを失った。
折角この世界で、ユニを正気のまま取り込むことが出来たというのに。

「でも、変わりに君が手に入った」

あんなにも望んでいた世界が手に入らなかったというのに、不思議と何の感情も抱けない。
それどころか、安堵していた。

「いつのまにか、世界より君が欲しくなっちゃったのかな」

笑える話だ。
けれど、こんな小さな生き物から感じる温もりが心地よくてたまらなかった。

「ん〜。ま、他の世界の僕がどうにかしてくれるでしょ♪」

君の温もりに気付いていない、可哀想な僕が。
自分らしくもない考えに笑ってしまう。
だけど、一度手に入れたこれを手放す気などある訳がなかった。
これはもう、僕のものだ。

「しょうもない世界だけど許してね。綱吉クン」

あんなに欲していたマシマロも、もういらなくなった。
変わりのように、小さな体を抱き締める。
びゃくらん、と可愛らしい声で囁かれて僕はたまらず赤く熟れた唇を貪った。
マシマロよりも、新世界よりも、僕を虜にしてくれる。


こんなしょうもない世界も、輝いて見える気がした。



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