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□1000 瑠璃さまへ。
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「せんせー!ぁ……露伴」
「 何だよ。別に毎回言い直さなくていいって言ってるだろッ」
玄関から声がして
キッチンから返事を返す。
そしたらすぐ後ろから「露伴」と聞こえて本気でビビった!
勢いよく振り返ったら、そこには恋人の姿。
「うわ!お前さっきまで玄関に「だぁって…露伴いつまでたっても来ないんだもん」
「いつも見送ってくれるのに」
そう言いながら眉毛を下げる仗助。
僕はそれどころじゃないと言わんばかりにそれをスルーし、ゴミ袋との格闘を再開した。
ぐぐッ…
「 っそ!」
「何?縛れないの?」
「お前がこんなにゴミを詰めるからだろッ」
だいたい毎回こんなに詰めたら縛れないと何回言ったら……ぐちぐちぐち…
「んぁあ!すんませんん!」
苛立つ僕からゴミ袋を奪い取り、簡単に きゅう と、それを縛ってみせる。
そんな姿を見て
(恋人としてはキュンと、同じ男としては悔しいという何とも)
複雑な気持ちになった。
「今日は仕事、行きますよね?」
そわそわとして、こちらを伺ってくる整った顔を
まだ近くでは、見慣れない。
僕は、仗助と同棲するためにこのアパートに引っ越してきたが
仕事は相変わらず、前の家の仕事部屋でやっていた。
「アパートなんかじゃ狭すぎて仕事なんかできやしないじゃあないかッ」
という理由で同棲を何とか 何とか 引き延ばしてきたのだが。
…まあ、ついに先日折れてしまったわけだ。
(だけど今じゃあ、一緒に住むのも、まあ、案外いいものだと思う)
「 途中まで一緒に行きましょうよォ」
「…1時限目はないのか?」
「今日は3と5時限目だけっス!」
だから早く帰ってきますよ、と笑う仗助。
「べべ、別にそんなこと聞いてないだろッ」
今日出しのゴミ袋で バシッ と叩いた。
「持つ」とも何も言わないで、僕の手から袋を取り、持つ。
その大きな もう片方の手が、僕と結ばれる。
「鞄が持てないから離せ」と言えば「じゃあ露伴の鞄も持つから手繋ご」と返ってくる。
いつからこんな
的確な返しができるようになったんだ、こいつは。
ひょい っと僕の仕事道具やらスケッチブックやら入ってる大きな鞄を持ち上げた。
大きなリュックを背負って、
僕の鞄を肩から斜めにかけて、
右手にゴミ袋、
左手に僕を繋ぐ仗助は、
何だか遠足にでも行く子供みたいだ。
ゴミ袋をぶんぶんと振って歩く。
嬉しそうに、僕を見る。
楽しそうに、僕に笑いかけ、
話しかける。
僕が、それを返す。
たったそれだけのことなのに、こんなにも 、
相手が仗助だというだけで、特別なことのように
胸が音を立てて、ふるえる 。
「…晴れてよかったな」
「そっスね〜」
やっぱ湿気があると髪キまんねェっスから。
と、気にするように盛られた頭を見やる。
「違う」
傘なんか ささなければいけない日には、
手なんか繋げないだろ…
「バカ助だな」
フン、と鼻で笑ったら「何スか?せんせ、ぁ、露伴」本日2回目の 呼び名の訂正が入る。
だがそれも同棲し始めた時なんかは「先生」よりも「露伴」を数えた方が早かったくらい、1日の「先生」は多かったが…
「なァ、露伴ん」
今日はハンバーグ食いたい。
まあ、
慣れる ってのも 悪くないな。
「…僕が作るのか」
「うん」
「お前、今日授業終わるの早いんだろ」
「うん」
「 じゃあ、仗助が作ればいいだろッ」
「 あ 」
「…何だよ」
「今日初めての「仗助」だったから」
頬を赤くして笑う 仗助。
そ、
「 それが何だよ」
「別にィ」
嬉しかっただけ と 笑う 。
悔しいが僕はこいつが大好きで、
笑われると嬉しくなるし、
お願いされれば、
してやりたくなる。
「じゃあ、俺こっちなんで!」
「 ハ、」
駅と、仕事場への分かれ道。
ゴミを出して、僕の肩に鞄をかけて、
ぶんぶん と大きく手を振った背中に叫ぶ 。
「ハンバーグッ 作って待ってる…」
からな、
言いかけて
振り向いた顔が ひどく嬉しそうで。
僕は真っ赤になったのだった。
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