時間を越えて

□-ある日の出来事-
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こいつは、大沼 貴士(おおぬま たかし)


顔はイケメンで、勉強もそこそこ出来る。しかも、野球のエースとくる。

モテない筈がない。

クソッ、別に俺には咲がいるから羨ましくなんかない。



「分かった、彼女と離ればなれになったからだろ?違うか?」



くっ…勘の鋭い奴め!


「別に」

素っ気なく答えると、俺は窓の外を見た。


ちなみに俺の席は一番後ろの窓側という誰もが羨ましがる場所だ。


「強がるなよ?」



「強がってねーよ。」



そんな会話をしていると、担任であろう先生がクラスに入ってきた。


「席に着け!」


そう言われると、全員は席に着いた。


「えー。今日からこのクラスの担任になった吉井 勝井(よしい かつい)だ。よろしくな。」

勝井か…カツイ?

何故か勝井に反応してしまった。理由は自分でも分からない。


「さぁ、始業式をやるから体育館に移動しろ!」

全員は立ち上がり、体育館に向かった。




体育館に着くと、始業式が始まった。

校長の長話にイライラしてたが、始業式が終わるとすぐにクラスに戻る事ができた。


クラスに戻り、HRが終わると廊下に出た。

先に終わっていた咲は、廊下で待っていた。


「咲、お待たせ」


咲に近づいて言った。

「ううん、私もさっき終わったとこ」



「そぅ?じゃ、行こうか」


そう言うと、下駄箱の前まで行き、靴に履き替え下校した。


下校途中俺は、携帯の時計を見た。


「12時20分か…どこかで食べるか?」


隣で歩いている咲に言った。

「うん、なら一回家に帰ってもいいかな?」

「ん?なんで?」


俺がそう言うと、顔を紅くして下を向きながら話しだした。

「だ…だって…久しぶりのデートだもん。綺麗な洋服を来て良助と一緒にいたいんだもん。」



な!?

お…俺の為に!?

なんて可愛いやつなんだ咲!

俺は嬉しいぞ!


「そ…そうか。分かった。」

やべ、意識したら顔が紅くなっちまった。


!?


咲がいきなり手を握ってきた。


「じゃあ、早くいこ!」


「……おぅ」


手を握ったまま家に一旦帰る事になった。

始めに俺の家に行き、服を着替えた。

俺は鏡の前に立った。

「大丈夫…だよな?」

確認すると、咲が待っている外に出た。


「お待たせ。」


咲と目が合うと、咲が固まってしまった。


あれ?

「咲?」


咲の近くに行き、肩を揺らしたり眼の前で手を振ってみた。

咲は、いっこうに動かない。


「咲……咲!」


大きい声で叫んだ。

「お…おぉ、良助か。なんだ?」


「なんだってお前…急に動かなくなるから…。」



「いや…良助がカッコよくて…つい見とれてしまった。」



て…照れる。

「あ…ありがとう。」

「うん…。行こ。」


そのあと、二人して顔を紅くして無言で歩いた。

そうしてる内に咲の家に着いた。

「少し待っててね?」

「おう。」

そう言うと、咲は家に入っていった。

さて、咲の私服姿楽しみだな。

咲の事だから、何着ても似合うだろうな。



咲が家の中に入ってから約20分が経ち、咲が出てきた。

「ごめん。待たせちゃって…」

うわぁーお…

なんて可愛さだ…一瞬天国が見えたぞ。

おそらく今の俺の顔は、マヌケ顔になっていることだろう。


「変…かな?」


何を言っているんだ!鏡を見てみなさい!


「変じゃないよ、似合ってる。一瞬女神かと思ったよ。」


「…………ばか」

照れたのか、咲は顔を紅くして俯いてしまった。


「じゃあ、行こう。」


俺達は、ファミレスに向かった。


咲は、久しぶりのデートが嬉しいらしく、俺の少し前をスキップで歩いていた。


「楽しそうだな。」

「うん!」

笑顔で返してくる。

こんな楽しい事がいつまでも続くと、今の俺は考えていた。

このあとに起こる惨劇も知らずに…。
























ドガァァン!


「え?」

今何が起こったのか俺には分からなかった。

交差点、青信号を歩いてる俺と咲。

次の瞬間、少し前を歩いていた筈の咲が消えた。


咲が立っていた場所には何故かトラックが横切っている。


「キャアァァァァァ!」


何処からか悲鳴が起こり、周りがざわつき始めた。

「咲?咲?」

さっきまで俺の目の前を歩いてた咲を探す。

俺の少し離れた場所に人が倒れている。

あれが咲の筈がない。

あれ?おかしいな…咲と同じ洋服だ。


そうだ…同じ洋服を来てる人なんてよく見かけるじゃないか。

俺は、よろよろと倒れている人に近づく。

トラックは、電柱に突っ込んでいた。

「咲?」


倒れている人の顔を覗くと、紛れもなく咲だった。
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