時間を越えて

□-ある日の別れ-
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「お兄ちゃん!行って来ます!」

「楽しんでこいよ!」

今日は家族で遊園地に行く予定だった。

だけど、急に野球の試合が入った為に俺だけ留守番になった。


「貴士、家を出る時はちゃんと鍵を閉めて行ってね。」

母さんは、俺に鍵を渡してきた。


「分かってる。」

そう言って、鍵を受け取った。


「じゃあ、行ってくるな。」

父さんが俺にそう言うと、玄関の扉を閉めた。


「俺も行きたかったなー…」


そぅ…俺も着いて行けば、あんな悲しい思いはしなかったと思う。

















猿山高校…何でこの高校は、猿山ってんだろう?

毎回校門を通る時、思ってしまう。

ま!別にいっか。


靴を脱ぎ、上履きに履き替えると教室に向かった。




教室に入ると、久しぶりの顔を見た。


「良助!」


俺は、良助が座ってる席に近づいた。

良助の近くには、良助の彼女の咲ちゃんがいた。


「貴士!久しぶりだな。」


「貴士君、おはよ!」

「おはよう!」

咲ちゃんにそう言うと、良助の方を向いた。

「体は、もう大丈夫なのか…?」


良助は、咲ちゃんとデートの途中トラックに跳ねられそうになった咲ちゃんを、良助が庇ってひかれたらしい。


この事は咲ちゃんから聞いたので、良助と話すのは久しぶりだ。


「あぁ!この通り!」

腕を振って元気をアピールしてくる。

「あまり無茶するなよ?」


「そうだよ!良助は、いつも無茶ばっかするんだから!」

俺と咲ちゃんで、良助をせめる。

「お…おぅ。気をつける。」


そんな事を言い合っていると、チャイムが鳴った。

咲ちゃんは、また昼休みに来るねと言い残し、自分の教室に戻った。

うちのクラスの先生は、まだ来ない。

職員会議が長引いてるのか?

良助とは隣の席なので、話を続けた。


「しかし、よく無事だったよな。」

トラックに跳ねられたのに、無事なのは凄い事だ。

「あぁ、俺達を助けてくれた人のお陰だ!」

助けてくれた人?


「助けてくれた人って?」

「ん?可愛い子」


良助は、そう言いながら空を見た。

ますます分からん。


話が終わったとこで、先生が教室に入ってきた。


「すまんすまん!職員会議が長引いてな!」

予想的中!


つまんねー授業が始まった。

俺は、先生にばれないように携帯をいじっていた。

Webを開く。その瞬間俺の目にあるものが入ってきた。

「えぇーー!!」


俺は大声を出して、立ち上がってしまった。

携帯を持って…

「大沼!いい度胸してるじゃないか。」

や…や ば い !

「い…いやぁ、これは携帯型シャーペンなんですよ先生。」

言ってから、後悔した。

「ほぅ…そんなシャーペンがあるなんて知らなかったけどな?」

顔は笑ってるけど目が笑ってませんよ、先生。


「あ…阿笠博士に作ってもらったんです。」

またやっちまった!


「そうか、大沼…放課後職員室に来い。」

あーあ…


渋々頷くと、皆に笑われた。

軽く死にたい。


授業が終わり、机とにらめっこしている俺に、良助が話しかけてきた。


「馬鹿だな、お前」

「うるせー。」


大沼貴士の憂鬱だな。

「何があったんだよ?急に大声出して。」


「それがな、見てくれよ。」

俺は、良助に携帯を見せる。


「またカービィか…」

「いいだろ?好きなんだから。」

見せるんじゃなかったかな?


「それで、その魔獣がどうしたって?」

「新商品が出た。買いに行かなきゃ。」


「…………はぁ。」


「溜め息つくなよ。」

良助とカービィの話をしていると、不意に後ろから話しかけられた。



「貴士君、カービィ好きだもんね。」

後ろを見ると、同じクラスの女の子が立っていた。


「麻季(まき)ちゃん!」

彼女は、瀬戸麻季。

文武両道、成績優秀、スタイル、顔ともに良し!

男なら一目見ただけで、惚れてしまう程だ。

ふった男は数知れず!


元に俺も好きなのだが…告白出来ないヘタレな俺が嫌になる。


「うん。好き。」

でも、君の方が好き!!

「私も貴士君がゲームやってるの見ておもしろそーだなって思ったから、買ったんだ!」

麻季ちゃんは、俺にゲームを見せてくる。

それも嬉しいのだが、俺を見ていてくれた事が一番嬉しい。

「でも分からない所があって…」

麻季は、少ししょんぼりする。



「なら…今度一緒にやる?」

なんて…な。断られるに決まってるのにな。

「え!?いいの!?」

予想外の反応。

「じゃあ、今度一緒にやろう!?」
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