時間を越えて

□-ある日の選択-
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「……寒い。」

とあるビルの屋上に、私がいた。

別に何をする訳でもない…ただ、この街を眺めながら昨日のあの少年の言葉を思い出していた。


『君はなんで、こんな矛盾だらけの事をしてるの?』


そうかもしれない…。


私は昨日事を思い出していた。

















「!!」


「だってそうだろ?人を自分を犠牲にして大切な人を助ける。それはまだいい…でも、俺や良助みたいに助かった場合他の人が死ぬんだろ?」


「な…何が言いたいの?」


「君は僕が誰かを殺そうとしたら僕を殺すと言った。でも、僕が生きていると言うことは?」


「!!!!」
















気づくのが遅かった…もっと早く気づくべきだった…。


私は…ただ………





















「ほら、大丈夫?美佳?」


「うん、大丈夫だよ哲平(てっぺい)」


転んだ私に差し伸ばしている哲平の手を掴み、立ち上がった。


「ほんと美佳はドジだよな!」


哲平は、人差し指で私の鼻を軽く突っついた。

「うぅ…いぢわる。」


楽しかった。



哲平と出会って、付き合い初めてからずっと楽しい事ばかりだった。


そぅ…楽しかった…あんなことが…起こるまでは…


それは私の誕生日に起こった。

あいにく天気には恵まれず、どしゃ降りの大雨だった。


プルルルルル


7時 家の電話がなった。


「はい、斎藤ですけど?」

私の名字は只野(ただの)だが、ここは彼の家なので彼の名字で名乗った。

同居はしてるものの、二人とも未成年の為結婚はしておらず、未だに恋人のまま。


『もしもし?只野美佳さんですか?』

誰だろう?


「はい、そうですが…どちら様ですか?」


『私、美南希(みなき)警察の渡部と言う者ですが。」


け…警察!?


私は警察と聞いただけでビクビクしてしまう性格のため、おどおどしてしまった。


「な…何でしょう…?」


『先ほど斎藤哲平さんが亡くなりました。』


え?


そんな…哲平が死んだ?


『斎藤哲平さんは会社の同僚をいきなり刃物で斬りつけてきたみたいで…同僚に返り討ちにあったといいますか…』


「そんな…そんな事あるわけないじゃないですか!!」

私は受話器を勢いよくきった。


哲平がそんなことするはずない…


「そんなこと…」



「なら、試してみますか?」

「え?」


私が振り向くと、そこに綺麗な女の人が立っていた。

歳は22歳と言ったところかな?


「試すって…何をですか?」

私は、彼女がなぜここにいるのかではなく、彼女の言葉に疑問を感じた。


「簡単ですよ、時間をさかのぼればいいんです。」


「そんな事…出来るんですか?」



「もちろんです。その哲平さんも助けられます。」


え…ほんとう…に?


「それは本当ですか!?」


「えぇ、その代わり代役を作らないといけませんがね。」

???


「代役…ですか?」


「そうです。哲平さんの代わりに死ぬ人を作らないといけません。」



「…………………」


そんな事が…出来るの?


「どうします?やりますか?やりませんか?」


私は…



「やります!えっと…」


「紹介が遅れましたね…私(わたくし)、榊原 未来と申します。」


「よろしくお願いします…未来さん。」


「わかりました。」


そう言うと、未来さんは指を鳴らした。

それと同時に、未来さんの横に綺麗な扉が現れた。


「わぁ………」

思わず声を失ってしまった。


「それじゃあ、行ってらっしゃい‥美佳さん。」


そして、私は光に包まれた。


カチッ カチッ

秒針の音だけが響く部屋に私は立っていた。

本当に時間をさかのぼったのであろうか?


私は、時計を確認した…。


5時30分


本当に時間をさかのぼっていた。


「哲平!」


私は家を飛び出し、哲平の会社に急いだ。


ナイフを持って…











6時55分


哲平の会社に着いた。


小さい会社だったため、簡単に侵入できた。


各部屋を手当たり次第探し、最後の部屋でやっと見つけた。


「そこを動くな!今、警察を呼ぶ!」


私は、とっさに隠れて中を確認した。

中には、社員が四人と哲平がいた。


社員の一人が、哲平にナイフを突きつけていた。



助けなきゃ


でも、この思いが最悪の事態に繋がるとは、今の私は知らなかった…。


そして、私は哲平にナイフを突きつけていた社員に突っ込み、刺した。


その動作が、スローモーションみたいな感覚に陥った。


「うがぁ!がぁぁ!!」


私が刺した社員が、その場に倒れた。


私は、血に染まったナイフを両手で持ちながらたたずんでいた。


残りの社員が悲鳴を上げる。


「哲平!早く逃げて!」


哲平は私の言葉を無視し、落ちているナイフを拾った。
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