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「絶対に帰って来ます。信じて待っていてくれますか?」

愛しいあの人は戦地へ赴くため、厳しい表情をしている。

本当なら僕が言っているはずの言葉を僕に言う。

彼は使用人の子。
僕は貴族の子。

お母様が自分の子ども可愛さに、彼を身代わりにして戦場へ送り出したのだ。

それを僕は知っている。

彼は僕が知っていることを知らない。

彼はいつも体の弱い僕を庇ってくれた。

僕はいつもそれに甘えてた。

いつか、いつか僕が彼を守ってあげたい、と思うようになったのはいったいい

つからだったろうか。

僕らの間には越えられない大きな壁がある。

僕の体は貧弱で、その壁を越えることはできない。
彼は、僕と自らの身分を慮って壁をもっと厚く、高くする。

決して相容れない君と僕。

だけど僕は卑怯者だから、僕の身分を考えてくれている思いを利用して、僕を愛するように仕向けた。

脆弱で卑怯な僕を愛するように。

そんな僕は愛される資格なんてないのに・・・・・。




「うん。待ってる……。ずっと待っているから、絶対に帰ってきて・・・」

貴方は後ろで自分を見張っている奥様の目を気にしながら私に泣き顔を見せる。

その涙を拭って、笑顔にしたいのに私にはその資格がない。

ただの使用人の子である私を愛してくれた貴方。

貴方の為なら私は何でもします。

死んでしまう確率の方が高い戦地へ赴くことも厭いません。

貴方は知らないでしょうね。

私が自ら奥様に身代わりを申し出たことを。

少しでも貴方の心に、どんな形であれ残しておきたかった………私という存在を。

私は知っています。

貴方が私の“使用人の子”という身分を使って自らを愛するように仕向けようとしたことを。

そんなことは必要ないのに。

私はとっくに貴方の事を・・・・・・・・。

どうか、私の存在を胸に焼き付けてください。

将来、誰かと愛し合ったとしても決して私が消えないように。






奪い、奪って、奪われて。

心はいったい何処にいやる?

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