鬼円

□彼の海に溺れる
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抱き寄せられた体は、

お互いの体温を確かめ合うように角度を変えて、より密着度を増す。



「心配しなくても大丈夫だ。俺はお前を心から愛している」



俺の表情一つで思ってることが分かったとでも言うのだろうか。

鬼道の言葉には迷いがなく、しっかりと俺の心に響いた。



「…良かった。俺、時々不安になるんだ」

「不安になる必要はない」



ゴーグルの中の鬼道の瞳は、優しい朱色で俺を見つめている。



「今、満たしてやる」



そう言って鬼道は口の端を緩やかに上げた。


抱かれていた体から鬼道の体温が消える。




ちゅ…




その代わりに唇に柔らかいものが重ねられた。

そうかと思うとすぐに唇は離された。


鬼道が「これはジャマだな」と言ってゴーグルを外し、また唇を重ねる。



俺の人生初のキスは、

恥ずかしくて、どきどきして、

長くて甘い、

触れるだけのキスだった。





さっきまでの不安の海はどこにもない。




きっと鬼道という名の海に溺れて、


溶けてしまったのだろう。







end
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