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□若さと花束
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15分ほど車で走って到着したのは市内の駐車場。


そこから少しばかり歩いて松永先生がななを連れて行ったのは隠れ家的な小料理屋だった。



街中だというのにわざわざ竹林に見立ててあり、中の様子はまだうかがい知ることが出来ない。


下からぼんやりと照らされるエキゾチックな照明はななを物恐じさせる。


私、制服着ているのに大丈夫なのだろうか、と場違いを一生懸命心配してもじもじしていると、松永先生はすぐに気がついて、ななに気にしなくていいと言いてくれた。



「ここは私の旧友の営む店だ。問題ないから気楽にしていなさい。こちらだ」



ダンディなおっさんってのは、いちいち私が口にしなくても人の考えていることが分かるらしい。



そんな風に考察しているのもつかの間、自分の腰に大きな、力強い手があてがわれておることに気がついた。


「ひっ……!!」


小さく呻いた私に、色気のない娘だ、まぁどちらでもいいのだがとか、鼻から抜けるような声でささやく松永先生。



「どちらでもいいんなら、ははは離してくださいっっ///」


そういってななはその大きな手を引っぺがした。


「ああ、これは失礼した。しかし君の理解はあまり正しくない。女に変わりはないからどちらでもいい、という意味で私は言ったつもりだよ」


手を少し前に掲げて、にやっと口角を上げて目を細める。


ちょっと、このポージング。
熟女にはたまらないんでしょうねぇ、松永先生まったく。
でも私は子供だから、そういうのは通用しないですよーだ!!


威嚇しつつも、松永先生の言葉の真意を認識した途端にななの背筋がぞわっとざわめき出した。



「「おとこはおおかみなのですから」」




再度脳裏によぎるあの美しい声。これは危険だ。



ただ今、
小料理屋の店主とあいさつを交わし談笑すru
松永の脇で、笹川ななは、この全くもって未開拓…未経験な状況をどう切り抜けるべきか、分かんない、逃げるしかないか、っていうかもう帰りたい、返してお願い、そんな気持ちでローファーとにらめっこしながら佇んでいたのだった。


しかし、結局何にも表立った行動が出来なかったななは、今現在カウンターに座って奥の大きな水槽に泳ぐ鯛を目で追っていた。



「君はこれでいいだろう」


そんなななの前に差し出されたオレンジジュース。
真っ赤なストローがかわいらしい。おいしそう。



「…ありがとうございます」

松永先生、やっぱりちゃんと子供扱いしてくれている。


馬鹿にされているのだけれど、女として認識されるよりはずっと安全だからななはストローに口をつけてわざと子供っぽく口をすぼめてみた。




「ほかに何か欲しいものがあるなら言ってみなさい、この店にあるものならば答えよう」



私が好きなものって言って、とっさに思いつくものと言えば、海老フライとかっぱ巻きくらい。

かっぱ巻きか、安上がりで君にお似合いだな、とか言いそうだな、このおっさん。よし、絶対言わないでおこう。



きょろっとななが目を動かすと、両肘をカウンターについて両手の指を口元でからめるポーズを確認。




先生は雰囲気が独特で、なんて言うか“まったり”としている。




これでブランデーか焼酎ロックでも飲んでりゃ、あんた完璧ダンディ王になれるよ。チャンピオンだよ。

でも、今日はお車だからお茶なんだよね。

それでもやっぱしちょっとだけ恰好いいよ、あんた。いい成熟度だよ、私が認める。




ひとりでにそんなことをポッカポッカと頭に浮かべている私に松永先生の視線が止まっていた。


急な話だったから、にらめっこするみたいにしばしの間見つめあった。眼の下の皺。自由で傲慢な人間性がにじみ出ているような気がした。





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