ポケモン

□前夜祭
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「綺麗だなー」
「…」

辺りが深い暗闇と静寂に包まれた頃、僕たちは冷たい地べたに座り込み空を見上げていた。
今日は新月だけど、代わりに数億もの星達が皆独自の光を醸し出し僕たち二人を誘惑した。

「あ、そうだレッド」
「…なに」

今見えてる星の光は皆、何億年も昔に放たれたものなんだってさ。
夜空を見上げながら、隣から聞こえてきたのはもう散々と言って良い程聞き慣らした声だ。
普段は良く通る声は、この時ばかりは少し掠れていた。

「へぇ……」
「だからさ、俺達が今見ているあの星達は何億年前の姿で、今のあいつらの有様は何億年も後にしかわからない。
そう考えると、ワクワクして仕方がねぇんだ」

あのグリーンにしてはなかなか難しい事を考える、と少し感心するが、そういえば元々それ程頭の悪い人間ではなかったんだったと自己解決。
それと同時に何故かほんの少しだけ心に蟠りが出来た気がした。

「でも俺、星にはなりたくねーや…」
「いきなり何」

先程から続く突発的な言葉を普段のように無視せず僅かながらに反応するのは、ただの気まぐれか或いは心の何処かで焦りを感じたからか。
きっとそのどちらも当て嵌まり、どちらも違う。

表情には出さないが悶々と様々な思考を張り巡らせていると、隣に座り込んでいたグリーンが無言で立ち上がり、数回足を歩ませた後こちらを向き直った。

「好き、」
「…グリ」
「これが伝わるのに、何億年だぜ?無理だよ…今以上にお前が遠くなるなんて、耐えられねーもん」
「…!」

そう言ってグリーンは悲しそうに目を伏せ、その場にうずくまった。

「この三年間、ずっと探してた。周りがなに言ったって、俺はずっとお前を信じてた、なのに…」
「……」
「なんでまた…行っちまうんだよっ…」

細い肩が小刻みに揺れている。綺麗な声が震えている。
泣いているのだろう、小さな塊からは絶え絶えに嗚咽が漏れはじめた。それを合図に、僕はそっと立ち上がり草を踏み締めながらその小さな塊に歩み寄った。
目線を合わせるよう自らも腰を下ろしその癖が強くしかし柔らかな髪を撫でると、目の前の塊は寄り一層肩を震わせた。

「グリーン、ごめんね」

好きだよ。そう言って震える身体を壊さないよう包み込むと、僕の腕の中でグリーンはビクリと大袈裟に肩を揺らした。
顔が見たいだとか不謹慎な考えを起こし、少しだけ首を傾け覗き込んだ。

そして後悔する。何故ならその先にあったのは、予想していた以上に痛々しく愚かで、愛おしい光景だったからだ。

「…ごめん」

すっかり真っ赤になってしまった目尻に指を当て優しく撫でながら呟くと、今度こそ声を上げて泣き出してしまった。
それに促されるかのように抱きしめる腕に力を加えた後、僕も少しだけ泣いた。酷く心臓は痛んだが、夜空の星たちは先程と変わらない姿で瞬いていた。


END

なんとなく恥ずかしい…笑

0515:少し修正

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