◇ヒアシンス

□Stop kidding!
1ページ/2ページ



「っ、はっ」


…多分山秋は今中澤先輩と部屋でしっぽりやってんだろう、と考えながら俺は誰もいない武道場で稽古をしていた。


「…集中、集中」



もうじき大会がある。

まだ俺は1年だけどもしかしたらメンバーに選ばれるかもしれないと、主将に言われた。


だから、努力しなければ。










「…はぁ、」

とは言ったもののなかなか結果は出ないものだな、と息を整えながら思った。

てか、結果ってなんだ?
試合に勝てば良いのか?
同期に負けなきゃ良いのか?それとも先輩も、これから入ってくる後輩にも勝てば良いのか?

「…あー、もう帰るか…」

と、歩き出してふと思った。


どこに?


「えぇ〜…!…あ〜?」


しまったあ…アポとんの忘れたぁあ……

こんな夜遅くに?いきなりお部屋御訪問?そんでシャワーも借りちゃうのか?


「迷惑にも程があるよなぁ」

ずるずると壁をつたいしゃがむ。


仕方ない、ここで寝るか。


どうせ誰もいないし、と胴着の帯を緩める。



(固い…、でも意外と寝れる)


俺は眠気に負け、そのまま寝てしまった。











「…ん」

煙草…?

煙たい…

つーか臭い……。


「…んぁ、え?」


「こらこら、ンな可愛い声出すんじゃありませーん。襲っちゃいますよー」


随分寝てしまったのだろうか、辺りはもう真っ暗でここ以外電気は点いていない。


「…正木先生?」

横にいたのは、空手部顧問の正木淳先生だった。

数学教師で、頭イイ癖にやってることはテキトーでアホ。

その上男も女も関係無い節操無しの男だと聞く。

最近は保健医の田原先生に熱を上げているって噂だけど……



「先生、何でここに…」

「そりゃ、オメー顧問が自分の担当んトコに電気点いてたら確認すんのは当たり前だろ?」


確かに。電気は点けっぱなしだった。

でもそれなら、来たときに俺をすぐ起こして武道場から追い出せば良いんじゃないのか?



「お前、何でここにいんだ?寮暮らしだよな?」


「あ、」


そんな事を考えていたら、先生が質問してきた。

思わず口ごもる。


「……同室誰だっけ?」

「え、あ…山秋、康人です。」


「…あぁ、中澤の」


何でそんな事知ってるんだ?!この人はっ…!



目を見開いて先生を凝視すると、先生はニヤリと笑った。

「解せねぇか?」


「何で山秋のこと……」

中澤先輩に聞いたんですかと続けようとしたら何とも教師らしからぬ返答が降ってきた。

「あいつ可愛いじゃん。」

「はいっ?!」


「いや、あいつ可愛いし喰ったらどんな感じかなぁって思ってたんだよ。だからずっと見てた。……まぁ直ぐ中澤が寄ってきてたから諦めたけど。」


確かに。

山秋と中澤先輩はすぐくっついたけど……

山秋可愛いけどっ…!


「先生、俺の友達をそんな目で見ないで下さい。」

「…もう見てねぇよ」


俺の言葉にゆっくり煙草の煙をはきながら答える。


「……他にもいるんですか?」


「…あぁいるよ。」


先生は悪びれもなく答える。


「先生、それ先生としてどうなんですか?」


「じゃぁ先生に手ェ出してる瀬山君とかはどうなの?」


あぁ、それは有名な話だ。
保健医の田原先生と3年の瀬山先輩はいつも一緒だと聞く。



「生徒は先生に手ェ出して良いけど、先生は生徒に手ェだすなって?」


じり、と先生が迫ってくる。

何だか怖い。


「せんせ…」
「横暴だよね?それって、」


ダァンッ



「っ!!せんせっ…」

「言っとくけど、生徒で喰ってみたいなって思ってんの、お前だから。」


「はいっ?!」


先生の言ってる事が理解出来なくて、思わず聞き返す。


「お前も、山秋に負けず劣らず可愛いし?どうせ、今は山秋も部屋でしっぽりだろ?」


―…俺達だって、楽しんで良いんじゃないか?

大丈夫、俺に任せときゃぁ最高に気持ち良くしてやんよ。



その声は、もう既に男の声で、俺は抵抗もそこそこに正木先生の腕に捕えられた。
















「せ、んせっ…いや、もっダメ、だめ、」


俺は胴着だったため、容易く脱がされ先生の指にすぐ翻弄された。


「ほら、雄大…?お前の此処、まだ下着の上からなのにぐっしゃぐしゃ。」


「な、まえっ……!ふ、やぁあっ、く…ひぃっ…」


散々色々なところを弄るくせに、肝心なとこは焦らされる。



「ん、きぁ…っひぅあ、っ」


勃ちあがった自身を、下着の上から人差し指でなぞる。


もうプライドが許すならば自分でヌきたいところだが


「雄大、気持ちイイんだろ?もう自分で擦りあげたい気分だろ?」


この教師のせいで、手をだせずにいた。

ここで手を出したら、何か色々終わりな気がする。



「頑張るなぁ、雄大ぁ」


そこで一度、先生の手が止まる。



「っはぁ、…くぁっ、せん、せっ…も、俺…」


無理です、と続けようとして…止めた。


「雄大ァ」

もう既に先生は俺を虐め始めていた。


「ほら、ここ。爪たてたら気持ちイイだろ?ここも、ここも。」


「っ…!!!」


先生は俺自身を触る真似をして、言葉責めを繰り返す。


「ここなんか、優しく触られると死にそうなぐらい気持ちイイんだとよ?」


「っ…く、ひぃっ…ぁあ、ひゃあ、あ、」


もう、もう…


「ほらここ。思いっきり吸われてみろ。すぐにイケるぜ?でも、イケないようにされてからの責めも、クセになるって……」


「ふぁあっ……あぁ、あ」


俺は耐えきれなくなって、あられもない悲鳴をあげた。


触ってほしい。

俺の頭の中はそれに支配される。



「…雄大…、可愛くおねだりできたら」


死ぬほど気持ちよくしてやるよ?



正木先生の言葉に誘われる様に、俺はねだった。


「先生、触って。俺の全部触って。俺、もう我慢できないからぁっ…、いっぱい気持ちイイ事、してぇ…」



「才能だな…。やっぱお前可愛いわ。」


先生は、そう言ってニヤリと笑い俺自身を握った。


「はっ…きぅぅぅう、っ!あぁあっ…あっ!…はんんっ!…」


待ちわびた刺激に腰が浮く。


「先生、出してい?、いぃ?…ひ、ぃぃいあっあ、」


「だめー。死ぬほど気持ちよくしてやるよって言ったでしょー?」


「は、くぅぅうっ…!、だっ、らめぇぇえっ…触っちゃ、触っちゃやらあぁぁあ…っ!あぁ、くっ、ひっ」


根本を握りしめられながら、遠慮なく擦られる。



先生は、俺が力尽きるまで俺を喰い続けた。


























「…」


「朝…?、先生?」


先生はいない……

…何だか、すごい夢…?

あれ…、え、え、え?!





何これぇえぇぇぇぇえ?!

身体じゅうにキスマークが点々としている。


慌ててトイレに駆け込み鏡を見るが、おびただしい数のキスマークを見て、目眩を覚える。


「、っ…」


夢じゃなかったのかよっ…



「はやく、部屋帰って…っ」

山秋はもう、部屋でてるかな?



俺は武道場から走って寮に向かった。






(何だよっ、ちくしょっ……!正木の馬鹿ーッ)














教室でクラスメイトにキスマークの事をからかわれる山秋を見ながら、俺は制服を握りしめた。



…どうか、気付かれませんように。


この、おびただしい数の独占欲と、まだ小さな恋心。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ