◇ヒアシンス

□猫
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「…ねこ」
「…猫だねぇ」
「……ぬこ」
「ぬこ?」


にゃーん



「…どっから来たの」



鳳凰に猫が迷い込んできました。







――…



「…え、どうすんのこれ」


「いや、何で拾ってきたの雄大。」


「だって可愛くて」


「可愛いからって何でも拾ってきてはいけません!」


「どこのお母さん?」



部活も終わって着替えて寮に帰る途中、可愛い猫が校内をうろついていた。
最初はスルーしていたが、なかなかしぶとくついてきてしまい、その可愛さにやられて寮まで連れてきた。


「なぁなぁ、康人…どうしよう…」


「どうしようったって…」


にゃーん


「…可愛い」


「…可愛いよ、可愛いけどさ」



まだ子猫なのか、とても小さくて野良なのに人を恐れようとしない。


「…もう、飼おう?そうしよう?俺、こいつを捨てるなんて…できない!」


「しっかりしろ雄大…!猫なんかに…猫なんかに感化されてどうする!」


にゃーん


「ぐっは…可愛い!」


「康人落ち着け」



ちびーずが猫にやられすぎなとこに早速来訪者がやってきた。









「悪いな上がるぞ…猫の鳴き声がすると聞いたのだが、何か知って……」


にゃーん



「くっ、黒川先輩…!」


「黒川先輩…!こいつだけはぁっ!」



「…元いた場所に戻して来い…!」


黒川は堪えた様な声で二人に告げる。



「んな殺生なあああ!」


「お願いします、黒川せんぱぁい!」


「お前らもう一度寮規定読み直せ!」



にゃーん



ぎゃぁぎゃぁ騒いでいると、猫がすすっと黒川に歩み寄って体を黒川の足に擦りつけた。



「…な、なんだ?」


にゃーん


「…っ」



黒川はゆっくりしゃがみこんでその猫を抱き上げる。


「……」


にゃーん


ハラハラしながらその様子を見守るちびーず。



「…この猫は俺が預かる。」


「黒川先輩っ!」


「どうか、どうか…!」



猫を抱え直すと黒川はキッ、とこっちに向きなおって断言した。





「俺が育てる!」





「「ええええええええええ!!!」」







「…黒川先輩っ!元はといえば俺が拾ってきたんですから俺が!」


「寮規定を読み直せ!」


「じゃぁ黒川先輩だって!」


「寮規定変える!」


「落ち着けお前!!」




安定のツッコミ係が不在な為(黒川)全てがグダグダになりそうな流れの中で、更にカオスなメンバーが現れた。



「康人が猫を拾ったと聞いて!」

「雄大が猫と戯れていると聞いて!」

「綾が猫耳尻尾を着けてくれると聞いて!」




「「何か来た!!」」


「帰れ、遼!俺は今取り込み中だ!」



今日は来客の多い日だ。

猫パワーって凄い。



「綾、本物の猫まで用意して…!そういうプレイを御所望なんだね!」


「黙らんかい!」


「猫と戯れる康人、萌え!」


「猫とごろごろしちゃう雄大、萌え!」



「変態!」

「うるさい!」




ガチャッ




「あー!見つけた弥久!」



突然前置きもなく入ってきたのは瀬山さん。え?弥久さんなんてどこにも…



「なぁに言ってんの?そこにいるでしょ、白猫が」


「にゃーん」


「………!?」


「はいはい、弥久。帰ろうねー?」


「にゃーん」



嘘だ!これは、ミクという名の瀬山さん飼い猫だ!そうに決まってる!瀬山さんも猫に恋人の名前を付けるなんて、変わってるなあ…あっはっは




「…じゃ、お騒がせしましたー」



そう言って白猫を抱きながら帰ろうと振り返った瀬山さんはもう一度俺らを見て、


「ま、君達も猫だけどね?みんな可愛いよ!」










「………………にゃ、」








「「「「なんだってーーーー!!?」」」」








「どうした康人!」
「雄大!」
「綾!?」
「弥久ちゃん!?」






ベッドの上で息を整えながら、それぞれ四人はホッと胸を撫で下ろした。





『夢で良かった。』







(→オマケ&あとがき)

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