†本編
□君と僕の幸せを、
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俺は薄暗い病院の廊下で
足を投げ出してベンチに
座っていた。
人の気配がしてフッと自嘲じみた声をだす。
「………そろそろ来るんじゃないかと思って‥」
「どういうことか説明するアル。」
目をおもいきりつり上げて俺を睨むチャイナ娘。
「おい、ドS。テメェ……」
「ほんのちょっとした遊び心だったんでさァ…。」
―…トシっ万事屋の事…
―…銀さんっ何言ってるんですかっ
「前からガキが走ってきて‥別に避けれなかったワケじゃなかったんでィ。ちょっとフラッとしたら思い切り母親とぶつかっちまったんでさァ。…気付いたら…俺ァ‥トラックの前に放り出されてて……」
総悟は一度言葉を切って
顔を両手でおおった。
「俺のせいなんでィ…。土方さんが俺に手ェ伸ばしてんの見えてたくせに…どーせ何事もなくトラック避けてやって…馬鹿にしてやろうと思ってたんでさァっっ!!」
語尾が強くなり、ビクッと神楽の肩が揺れる。
「……まさか‥まさか万事屋の旦那が出てくるなんて」
キキーッ
「総悟ッ!!」
ドンッ
「っ…―」
「十四郎っ!!!」
俺はその無骨な手に強く押された。
前に倒れる。
そしてトラックと『何か』がぶつかる音。
「っ!!!??」
慌てて振り向くと、
「土方さんっ!!旦那ァ!!」
頭から血を流し、倒れている2人を見た。
俺のせいだ。
俺のせいなんだ。
俺があの人達の幸せ
を奪った。
俺が悪い。
俺が………
全てを忘れたかった。
どうせなら俺も全て
ワスレタイ。
「……もう‥嫌なんでィ」
何もかも、
「テメェやっぱど阿呆ネ。」
「なっ…!!」
ガッ
神楽は物凄い力で総悟の首をしめた。
「っ…!」
「自分が悪いって思ってんならそれならそれで良いネ。でもその罪悪感から逃げるために全てを忘れるなんて無責任な真似は絶対許さないアル。」
「は…なせ」
「テメーに少しでも銀ちゃんたちを助ける気があるなら、本気で2人を支えてやれば良いアルッッッ!!!」
「離せっっ!!」
ドサッ
総悟は神楽の腕から逃れる。
「忘れたいんだよっ!!全部っ全部っ…!!何で俺ァいつもいつもっ土方さんの邪魔になるんでィ…っなんで俺ァ‥ただ近藤さんの役にたちたいだけなのにっ‥…」
総悟は両手で頭を抱えて座り込んだ。
怖い。皆に必要とされなくなる事が。
怖い、自分の居場所がなくなることが。
ひとりになりたくない。
嫌われたくない。
怖い怖い…
「…お前のそんな顔なんて見たくないヨ。」
神楽は静かに呟いた。
「お前に厳しい事言ったのはテメーがそんな事で負けないのを知ってるからアル。」
そっと総悟の隣に座る。
「お前は強いアル。だから…」
トンッ
総悟は神楽の肩に寄りかかった。
「悪ィ…今だけ‥今だけこのまま…」
「……あとで酢昆布百個アルよ。」
「まじでか」
軽い口を叩きながら総悟の頬は涙で濡れていた。