連載番外

□どっちも一番。
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2006年、12月…31日。


23時52分。



こんな日のこんな時間にも、部屋で寝ていた流川は

枕元に投げ出された、滅多に鳴らない携帯の…ピピピピピ、というありきたりな着信音に
安眠を妨害された。







【どっちも一番】






暗い部屋の中で、明るい色を点滅させる携帯を、うっすら開けた目で捕らえて。

まだ頭は覚醒しないまま、パカリと折り畳み携帯を開く。




鳴りやまないその携帯の、明るくて目に痛いディスプレイに表示された名前に…






「…っ」






寝起きとは思えない動きで、飛び起きた。









《着信 上田 志緒》








ただでさえ、滅多やたらに電話などしない流川。

おぼつかない手付きは…
寝起きの為か、
慣れない為か、
それとも…?









「………ハイ。」




受話器上げるのボタンを押して、耳にあてがったはいいが…
何を言ったらいいのかわからず。

電話に出てから数秒の後、たった一言そう返した。






『楓?寝てた?』





聞こえて来たのは紛れもなく、クラスメイトであり、所属するバスケ部のマネージャーの声。






「…ん。」

『なぁんでこんな日にまで寝てんの、アンタは。』

「…眠ぃーから。」

『じゃあ我慢して起きてて。』

「なんで。」

『…アタシが電話してやってんのに眠けりゃ寝る気?』





別に電話中に寝ようとは、流石の流川も思ってない。
もちろん電話が終わったら、と考えていたのだが…
面倒なので否定もせず、話を変えた。






「…で。」

『あン?別に用は…なくもないけどさ。』

「…はぁ。」




どっちなんだ。
と溜め息を吐いたが…

聞こえる音に、疑問を抱いた。






「…外?」




電波が悪いのか…声がくぐもって聞こえる。
車が通り過ぎる音も聞こえる。






『まぁね。』

「どっか、行くのか?」





いや、何処へ…よりも、

『誰と』と聞きたかった。




 
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