ж…K*Novel
□…花煩い…八
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啜り取った、
愛しい人の赤い命の液体。
とてもとても、甘美だと
舌が記憶。
+甘く苦い口付け+
「………。」
次の朝、神田は首筋に大きな傷を負いながら、参内した。
役人達の目は、興味の色を込めて神田を見つめ、
それがすぐさま暇な女房達に伝わり、噂話に花を咲かせる。
居心地のいいものではなく、
しかもこの傷を、憑かれた物の怪にやられた傷かと噂されれば神田が切れるのも無理の無い話しだった。
その日はさっさと仕事を切り上げて帰る事にした。
あの屋敷に、アレンが待つ場所に…。
あの夜、泣き崩れたアレンを慰めようにもどうしていいか分からず
抱き寄せようとすれば暴れて拒まれ、顔を上げろと強引にも向かせようとすれば一層泣き出す始末。
お手上げ状態になった時にあの少女が現れてアレンを褥に寝かせ、襖で仕切りを作った。
『今宵はこのままご就寝下さい。』
神田の傷の手当をしながら、少女は少し戸惑いを含んだ、
それでいて怒っているような目で、口調でそう告げて出て行く。
変にまた動いてもアレンを混乱させるだけならば、と大人しく別の褥で寝た。
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