『つめたい』


冬、雪、夜どれも寒いイメージの言葉ばかり
その3つが見事一緒になったいま。
何もかも嫌になった私は隊舎を離れ桜の木の下で雪の上に寝転ぶ

頭上にある桜の木は当然ながら咲いていない


『桜…もう一度みたかったかも』


だんだん手足の感覚がなくなってきた。
最後にもう一度だけ空を見ると私は死を覚悟して目を瞑った





ばいばい。私がいままで生きてた世界





ふいに腕を引っ張られ上半身を起こされる。
私を引っ張った手はとてもあたたかくて少しだけ指の感覚が戻ったような気がした


「何やっとんねん!!」


怒鳴られたけど耳が麻痺していてそれほど衝撃はなかった。
でも少しショックだった。
「放っておいて」そんな言葉が脳裏によぎったけど、目の前の人物をみて言いかけた言葉を飲み込んだ


『ひらこ、隊長・・・・』


同じ隊ではないけれど部下に優しくておもしろい。
そういうイメージがあった


「こない寒いところで寝てたら死ぬやろッ!」


『………いいんです。私なんかどうせ死んでも誰もッ』


パンッ

叩かれた頬がじんじんして思わず手で押さえれば自分の手の冷たさに驚く。


「アホ!!簡単に死ぬなんて言うな!!!」


頬を押さえている手に涙が伝う。
どうして涙が出るの?
どうしてこんなにも主れ手来るの?


「何があったか知らんけど、死んだらアカン…」


どうして何も接点がない私のために涙を流してくれるの…
私なんかが生きててもいいの…?


『っ…ひらこ、たいちょ………たすけてッ』


その日私はもう一度、この世界で生きていくことにした。





H22.12.03.







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