Short Novel

□再会
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   蜜柑

俺はあの日からずっと
お前を探し続けた。
あの日々の思い出は今も
褪せることなく胸にある。
もし、
本当にお前の存在が消えてしまって
いたとしても、
俺は・・・


桜の木が見えてきた。
ふっと足が止まった。
桜の木の下に女が立っていた。
桜の木を見上げている、女。

「・・・み・・かん・・・?」

あの日から5年間
胸の中ではずっと叫び続け、
しかし決して口には出さなかった
名前を口にした。
掠れた、声。
聞こえるはずなんてないのに。

でも、女は振り返った。

「棗っ!」


後から知った。
蜜柑は消える寸前で記憶と
身体を引き離したらしい。
記憶は親友がかくまって
くれていたらしい。
それでも
前代未聞のことをしでかした
蜜柑の身体は、ダメージが大きすぎた
らしいく、時間がかかったそうだ。
蜜柑は俺に約束した。

もう二度と、あんたの前から
消えないから―――と。
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