Short Novel

□保健室の香
1ページ/1ページ

ぴぴぴぴっ

「棗、どうやった?」
「・・・・・38.9」
「あかんやん」

今日1日、ずっとダルそうにしていた
棗を引きずって保健室に行くと、案の定、
熱があった。
・・・しかも、高熱。

「うーん・・・。棗、どうする?
保健室の先生おらんし。
先に帰る?でも、しんどおない?
あと1時間待つんなら、迎えにくるけど・・・」
「・・・・・寝とく」
「あそ」

棗をベッドに寝かしつけ、氷枕をわたす。
そして、

「じゃあ、大人しくしとくんやで」

そういって背を向けると、
ぐいっと手を引かれた。

「ちょっ・・・・ちょっと、棗!?」
「うるせえ、頭に響く・・・」
「じゃー離せーーーーー!!!」

棗はしっかりと腕に蜜柑を抱え、
目を閉じる。
蜜柑の首筋に鼻を寄せ、くんっと匂いをかぐ。

「においかぐなぁ!!!」
「臭くないぜ?」
「そういう問題やないわ!」

棗は、わめく蜜柑を無視し、
首筋に顔をうずめ、目をつぶる。

「・・・・まったく・・・」

蜜柑は、動かなくなった腕の中で
脱力した。
まあ、彼がこんな風に甘えてくるのは
めずらしいので、今日だけは許してあげよう。

保健室の香に包まれて。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ