薔薇のマリア
□拒飾症
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ここはセレブのパーティー会場。
ひょんな事からランチタイムのメンバー数人が参加することとなった。まるで異世界のように豪華な場所に、それぞれ思い思いの正装をして過ごしていた。
そんな中、正装をせずに普段着のままで参加して目立つ男が1人いた。
そんな男に美しい深紅のドレスに身を包んだ女が声をかける。
「ねぇ」
「あ?」
「何であんた普段着のまんまなのよ」
「堅っ苦しい格好は嫌いなんだよ。てめぇこそ何でその格好だベティ」
「別に普通じゃない。みんなドレスよ」
「それでみんなと同じく馬鹿な男共と踊ったりお決まりの世辞言ったりすんのか?」
そのダリエロの皮肉まじりの言い方にベティは眉をひそめる。
「えぇ、そうなるわね」
「ケッ めんどくせぇ、やってやれっか」
ダリエロは1人そのまま外へと出て行ってしまう。それをベティは追いかけた。
「下らねぇと思わねぇか?」
「は?」
突如吐かれた言葉にベティは一瞬何のことを指しているか分からなかったが、直ぐにこのパーティーのことを言っているのだと分かった。
「退屈ではあるわ」
「だろ?着飾ってあからさまな嘘を言い合ってよ。そんな着飾ったって意味ねぇっつうの。」
「まぁ、そうね」
「ってことでこのまま一緒に抜け出さないか?ベティ」
勿論ついてくるよな?そう言いたさげな目にベティは笑ってしまう。でもその笑いは、これからを期待する高揚感からくる笑いだった。
「えぇ勿論。ここは退屈過ぎるし、なにより痛いわ」
そう言うとベティは自らが履いていたヒールも値段も高い靴を脱ぎ、すぐそこの噴水へと投げ捨てた。
「噴水が汚れる」
「うるさいわねぇ、水を差さないでよ。そんなこと言う暇あったらさっさと行きましょう」
「それもそうだな」
1組の男女は夜を駆ける。
拒飾症(着飾るなんて無駄なこと)
でも、やっぱり着飾った姿も綺麗だったなぁと男が思ったことは、女には言わない。
title泡朧