THE OTHERS

□ある夜のひとこま
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「お兄さん、寄ってかない?‥あらぁ、いい男」

深夜路地裏を歩いていると、リンクは見知らぬ女性に呼び止められた。

濃い紅を引いた妙齢の女は、ちらりとリンクの腰に下がったルビーの詰まった大きな財布を見やった。同じく腰に下がる立派なこしらえの剣といい、身なりは簡素だが懐は暖かそうだ、と推測する。

「もう夜も遅いしさあ、最近は化け物も増えて物騒だもん、今夜はうちに泊まってお行きよ」
「お姉さんは、宿屋の人ですか?」

リンクは、このときかなり疲れていた。その前のボス戦の疲れも取れないままハイラル平原を横断したのだから、当然と言える。
足は棒のようだったし、どこかそこらの軒下を借りて一晩を越そうと思っていたのだ。こんな深夜に開いている宿屋などあるまいと思っていたのだが、久しぶりにやわらかいベッドにありつけるならありがたい。

幸いと言うか、数々のモンスターをなぎ倒し、ダンジョンを踏破したリンクはお金には困っていなかった。

「宿屋って言うか、まあそうね、宿屋だわね。」
「じゃあ‥‥」

一泊お願いします、と言いかけたリンクの耳元を仄かな光が横切った。

『ちょっと、リンク!宿屋って、何の宿屋かわかっていってるの!?』

高い声で騒ぎ立てるナビィにリンクは不思議そうに囁き返す。

「宿屋に何の宿屋とかあるの?」

ああ、やっぱりわかってない、とナビィは脱力した。

見た目は凛々しく賢そうな美青年でも、中身はコキリの森で純朴に育ったお子さまのままなのである。

そうでなくとも一般常識に疎い彼に、理解できるはずもない。
妖精の常として意外と耳年増なナビィは、女性がいわゆる娼婦であることも、宿屋がいかがわしい場所であることも知っていた。

だが、問題はこのお子さまにそれをどう伝えるかである。


(リンクはまだこどもだもの、事実を教えるのは早いわよね‥‥)

迷った結果、とりあえず強気で納得させる作戦に出た。

『彼女の宿屋は18歳以下は立ち入り禁止なの!リンクはまだ入れないの!』

負けん気の強いところはあっても、根が素直なリンクは、そうなんだ、と納得してくれ、ナビィはほっと胸を撫で下ろした。

「すみません、僕はまだ子どもなので‥‥」
「あらぁ、残念ね‥‥」

見た目だけはまたとない美青年を逃した女はしばらく未練げに見送っていたが、気を取り直して宿屋へと戻っていった。




当初の予定通り町外れのぼろい空き家で、リンクは健やかな寝息をたてていた。
寝顔を眺めていたナビィは、すべらかな頬に切り傷を見つけて、胸が痛くなる。

(見た目が大人だろうと、剣の腕がどんなに凄かろうと、リンクはまだ子どもなんだわ)

その子どもの細い体に、世界の行く末が懸かっている。ひどい話だ。だがどうしようもない。リンク以外の誰にもできない。

しんみりしていると、リンクがむにゃむにゃと寝言を言った。


「まだまだ食べられるよー‥‥ふふふ」

ナビィは思わず吹き出して、それからその緩んだ頬の擦り傷に薬を塗ってやったのだった。







呟き

夜が問題なら太陽の歌吹けば?という突っ込みが思い浮かんだ方はお友だちになりましょう。

というか恐らく誰も見ることはあるまいと言う確信のもとに好き勝手に呟きます。

主人公受けを好む傾向にある自分としては、リンクは受けだと思うのですが、問題は適当な攻めが見当たらないこと。
刻オカだとやっぱり100年に一度の伊達男ガノンさんでしょうか。でもそもそも会う機会が三度(かな?)しかない上、三度目には止めを差しちゃうのでのでいまいち。
シークはルックス的にも立ち位置的にも高得点なんだが、正体があれなのでなんだかいまいち萌えきれない。

いま唐突に思い出した、デクの木様の子供に擬人化していただくと言うのはどうだろう。
あっ、ダークリンクを忘れていた。
まあRPGなんだから触手系モンスターとかそういうのでいけばいいか。

ここまで読んでくれた方に感謝いたします。
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