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□紅い月
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この手は、この剣は、いつか大切なものまで奪ってしまいはしないか。
今日の仕事は最悪だった。否、仕事自体は、変哲の無いものだった。
ある男が金を横領して逃げたから、捕まえるか殺してくれというもの。危険の高い仕事ではなかったし、事実、私とガユスは怪我一つしていない。
私が浴びたのは、敵の血だった。
空中に蹴りあげて、それをしたから突き上げたので、かなり血をかぶってしまった。
そして、血に汚れた手と刄を見て、唐突に思ったのだ。
この手とこの剣は、いつか大切なものまで奪ってしまうのではないか、と。
事務所に帰るなり、ガユスを押し倒した。
何故の行動か、と問われても、うまく答えることはできない。
唐突に沸き上がった衝動のままに、ガユスを抱いた。
ガユスは、今までにないほど抵抗した。
「やめ、ろよ‥‥」
ガユスの碧い瞳から、涙がこぼれ落ちる。
私はそれにかまわず一息に貫いた。