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□紅い月
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「ん‥」
ああ、温かい。俺はこのぬくもりの主を知っている。
「ギギ、ナ‥?」
ギギナは、俺を抱き締めていた。声に応えて俺の顔を覗き込んだギギナは、けれど直ぐに俯いてしまった。
「っ‥ガユス、私は」
沈痛な面持ち。その顔が迷子の子供みたいに不安げだったので、俺はギギナをぎゅ、と抱き締めた。
「ガユス、逃げろ、私は、私の手は剣は」
言葉とは裏腹に、ギギナは逃げるなとでもいうように強く俺を抱き締めた。
「いつかお前まで、」
ああ、こいつ、馬鹿だ。
「馬鹿だな」
そう言って頭を撫でてやると、ギギナはどこか泣きそうな顔をした。
「傷つけるのを恐れるほど、俺のこと好き?」
こくん、とギギナが頷く。そんなギギナのやけに幼い仕草が可愛くて、俺はちゅ、とその美しい額にキスを落として。ギギナの宝玉のような瞳を見据えた。
「じゃあ、守れよ。敵の刄からも、お前の狂気からも、お前が俺を守って。」
目を見開いたギギナに、にっと笑んで。
「いつもみたいにさ」
ギギナに強く抱き締められる。
強すぎてちょっと痛かったけれど、縋るように俺を抱くギギナがあんまり愛しかったので。
もう少しこのまま、と思った。
血に濡れた紅い月は、どうかそのままで。
蒼い清らかな光に耐えられない罪人に、その光を降り注いでください。
血に濡れた紅い月。君への愛で、その紅をさらに増して。君がそれでもいいといってくれるのなら、この身の全てで君を照らそう。
この愛すべき罪人にふさわしい紅で。