THE OTHERS

□瞳
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女の子は好きだ。

彼女達は、やさしいし、良い匂いがするし、かわいい。

ちやほやされるのも好きだ。

自分で言うのもなんだけど、頭良し、顔良し、しかも家は世界有数の大金持ち。黙ってたって、女はいくらでも寄ってくる。

数年前までは、そんな女達を侍らせて、それでいいのだと思っていた。

「ねぇ、京介、また会える?メアド教えてよ。」

ベッドの上で縋ってくる女の名前は、確かリエとかいった。

執拗に連絡先を聞いてくるのが、うざったい。増田の名だけで俺の家のことに気付いて調べまでするとは、OLなんて止しときゃよかった。

「ねぇ、また会おうよ?あたし京介に本気で惚れちゃった。」

それは嘘だ。もしくは錯覚か。

生まれてから十数年、財閥の御曹司なんてものをしていると、嘘を見分けるのが巧くなる。
この女の目に映っているのは俺じゃない。「頭よくてお金持ちのイイ男」という、ただの俺のステータス。

「悪いんだけど、本命がいるんだ。リエちゃんとは遊びって、最初から言っといたっしょ?」
「でも、好きになっちゃったんだもん。ねぇ、二股でもいいからさ、とりあえずメアドだけ教えて?」

ああ、煩わしい。
この手の輩はしつこい。しかも自分に自信があるので、普通に振っても食い下がってくる。

確かに結構美人だが、周りに美形が多いので、俺にしてみればまあまあって感じだ。

えみかのほうが、ずっと美人だ。

「ね?いいでしょ?」
「、何してんの」

油断も隙もない。勝手に俺のケータイを取って、赤外線で情報を送ろうとしていた。

「勝手に触んな」

俺の雰囲気が変わったことに気付いたのだろう。リエちゃんははっと顔を上げ、取り繕うように笑った。
いやな眼だ。

いやな笑顔だ、と思った。人に媚びる笑顔だ。

「あっ、ごめんね?でも、あたし、どうしても京介とこれきりになりたくなくて‥‥」
「あんたとはこれきりだよ。お互い遊びだっつったでしょ。‥‥なんか冷めた。俺帰るわ。」
「あっ、ちょっと!」

引き止めようとする彼女を無視して、ホテル代だけ支払ってホテルを出た。それだって、何処にでもある安いラブホだから高が知れている。

小遣いは有り余るほど有るが、どうでもいい娘に使う金はない。

えみかなら最上級のスイートだけど。



街の光は、他人行儀で何処か冷たい。

自覚は有るけど、俺は結構寂しがりやだ。他人ばかりの夜の街は、誰も居ないよりも孤独が深い。

「孤独は山奥にではなく街の中にある、か。」

誰の言葉だったろうか。
優秀なはずの脳は、しかし別の人名を浮かび上がらせた。


えみか。‥政宗先輩。嵐、めぐみ、ミッキー。

誰でもいい、『俺』を見てくれる人に会いたかった。
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