《Love Get》

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『はっ隼人様!申し訳ございません。まさかもうお帰りだとは存じもせずっ』


家に帰ると沢山の召し使い達が俺を出迎える。まだ昼前な事から俺が早退するとは思ってもいなかったのだろう執事が真っ先に謝ってきやがった。

『……構わん。俺は休む…暫く誰も部屋に入るな』
『はい。畏まりました』



バタン
『…はぁ』

自室に戻ると俺はベッドの上にカバンを放り投げ制服のネクタイをほどく。窓の外を見やると燕が青空を飛んでいた。自由に飛び回る燕を見ていると 嫌な気分になる。


ピピピピっ
『っっ!!!』

突然俺のベッドサイドにある金箔で彩られた電話が鳴り出した。多分親父だ………。それを思うとまたため息が出てくる。俺は面倒ながらも電話の隣の“connect”のボタンを押した。


『………何だ』
『失礼します坊っちゃま。旦那様から御電話です。お休みだからとお伝えたのですがどうしても話がしたいと仰るので……どうなさいましょう?』
『……繋げ』
『はい只今』


受話器を取り耳に当てると予想通り中年の聞きたくもねぇ親父の声が聞こえてきた。

『隼人か』
『……あぁ』

このふてぶてしい声、2ヶ月ぶりだぜ……。


『今日も学校を早退したんだってな。』
『今日“も”じゃねぇよ学校早退したのは今日が初めてだ』

受話器の向こう側から俺以上の盛大なため息が聞こえた。



『隼人…お前自分の立場が分かっているのか?日本を代表する獄寺家の跡継ぎだぞ。学校も満足に行かない…言葉使いは悪い…将来どうするつもりだ?』

『別に…獄寺家の跡継ぐ気ねぇし…俺の勝手だろ』


本当にどうして俺の周りの奴等はろくに俺の事知りもしない癖に何故こんなにも五月蝿ぇんだ?いい加減にしろよホント。


『お前の立場になりたいと金をも投げ出す輩が世界に何百人…いや何億人居ると思ってるんだ?海音寺家に生まれた事はこの世で一番幸運なことだぞ。それをお前は…』


また始まった。親父の蘊蓄がベラベラと…あぁうぜぇ。

『おい聞いているのか隼人……おい隼…』

ガシャン


これ以上親父の長話に付き合う気も起きず俺は話の途中で電話を切った。キングサイズのベッドに後ろから倒れるとドサっと大きな荷物が落ちるような音が響く。


『………………』
どこまでも高ぇ天井。


『ったく……頼むぜ』

誰に向かって言ってる訳でもない…何かの意味を持って言った訳でもない…。ただ今は呟きたかっただけだ。

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