《Love Get》
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看護師が部屋から出て行くと俺はツナが寝ているベッドの近くに腰をかけた。
『ツナ……』
こいつの寝顔を見たのは始めてかもしれない。物心つく前からいつも一緒に居はしたが大抵はツナが俺につきまとってるだけで俺からはこいつに深く関わりたいなんぞ考えた事がなかったから…。
と言うか…一体こいつの頭ん中はどう言う構造になってるんだ?…毎日毎日俺を見る度“ご主人様〜”と詰め寄って来ては俺の世話ばかりしやがる…自覚はないみてぇだがツナは相当モテる。そんなツナが何故俺ばかりに構うのか…今まで恋人が出来た事がないなんて奇跡のようなモンだ。
『ん………』
『っっ!!』
ツナの眉がピクッと動いた。
『ご主人…様?』
『ツナ!気がついたのか?大丈夫か!?』
ツナは俺が何を言っているのか分からないといった表情で目を虚ろうつろしている。
『ご主人様…俺のバッグ…俺のバッグ…は?』
バッグとはツナが愛用している あのオレンジのバッグの事だろうか……。
『あ、あぁここにあるぜ?』
『借して…下さい』
目が覚めるなり何なのだろうか。だが今ツナが望んでいる事なら全て叶えてあげたい。俺は膝下にあったツナのバッグを取ると本人に手渡した。
『ほらよ…起き上がれるか?』
『大丈夫です…あ、あった!…はいご主人様!』
『……………?』
手探りで取り出した何かを俺に差し出した。渡されたものを見てみると それは見慣れた俺の愛用している種類の煙草の箱だった。しかもまだ開けていない買ったばかりの新しい煙草…。
『おいツナ…これは…』
『え?知らないんですか?煙草ですよ?先の方に火をつけて口にくわえるんです』
ンなもん知ってるっての…つか喫煙者だってんだ。
『じゃなくて…何で煙草?』
吸いたい吸いたいと思ってはいたが運悪く切らしていたのだ。買いに行こうにも具合が悪くて行く事すら出来なかった。だから吸いたいと思っていた今、煙草を手にしているのは嬉しい。だが何故ツナがこれを…?
『ご主人様仰ってたじゃないですか…昨日“煙草…煙草”って。なんで俺買いに出たんですけど……』
『っなっっ!!』
ツナの話を聞いて俺は衝撃を受けた。ツナが話すには俺が昨日の晩“煙草”と言っていたから買いに行こうといつものコンビニに向かったのだが運の悪い事に閉まっていた。仕方なしに他の店に行っても“店じまい”“閉店”のどちらかで買う事が出来なかったそうなのだ。
『まさか…お前それで…』
『それで隣町まで来たらやっと見つけましたよ煙草!もう良かったですっ最後の一箱だったんですから…』
唖然としてしまう。はっきり言って俺は煙草を頼んだ覚えはないのだ。あまりに吸いたいと言う気持ちが強かったからなのか寝言でも言っていたのかもしれない。そんな自分の言葉をこいつは叶えようと必死に……
『っっっ』
俺は無意識にツナを抱き締めていた。自分でもその時の事はよく覚えていない。
『ご主人…様?』
『テメェ心配かけやがってツナっ………』
ただただツナが無事だった事が嬉しかった。―――気がつけば俺は熱が下がっていた。