中編

□部長
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「…はぁ、どこ行ったんだぁ?名無しさんの奴…」



部室から飛び出して行った名無しさんを探して走る。



「それにしても…名無しさんは何で怒ったんだー?」
「蒲原が気に障る事言ったんだろう。」
「ワハハ、私が原因かー?」


そんな事を言いながら、ゆみちんとむっきーと名無しさんを探す。


どうやら“笑ってほしい”は禁句だったらしい…


いや、もしかしたら表情や感情に関する話題はNGなのかもしれない。



「あ!先輩、いましたよ!」
「ワハハ、じゃあ私が行ってくるよ。」
「一人で大丈夫か?」
「うーん…まぁなんとかやってみるさ。」


連れ戻すから部室で待っててくれ、と二人を帰し名無しさんの下へ向かう。






「名無しさん、気に障ること言ってごめんなー。」


背後から声を掛けるとビクリと肩が震えた。


『いえ、私こそすみません。いきなり逃げたりして…』
「隣座ってもいいか?」
『…どうぞ。』


校庭の大きな桜の木の下。

桜の花が散り、緑に色付き始めたその下で名無しさんと二人肩を並べる。


放課後の校庭―

部活動に励む人達の声が響く中、私達は静かに言葉を紡ぐ。



「ごめんなー、泣かせちゃって。」


私の言葉に頬に手を遣る名無しさん。
ペタペタと頬を触り、涙に濡れていない事を確認する。


『………泣いてなんていませんよ。』
「いやー、何となく心の中では泣いてる気がしたんだよなー。」
『何ですか…それ。』
「ワハハ、名無しさんのペースで良いよ。少しずつ、いろんな名無しさんを見せてくれや。」


心なしか笑った気がした


(ワハハ、帰還したぞー。)
(名無しさん、心配したんだぞ。)(良かった、戻って来てくれて。)(すみません、ご心配お掛けして。)
 

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