庭球

□昼休みの自己防衛
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俺は今までにない程どうしたらいいのかわからない状況に立たされている。決して大袈裟ではなく。事の発端は昼休みのジローの一言からだった。


「ねーねー、俺さっき寝てたら女の子からお菓子貰ったんだけど寝惚けてて誰がくれたのかわからなかったんだよね〜」

ここまではいつも通り何のへんてつもない話題だ。ジローが女子から菓子を貰うのは何も珍しいことじゃねぇし、ましてや寝惚けてるなんて毎度の事だからその場で飯を食っていた俺たちは「ふーん、そっか。だからどうした?」ってな感じでジローの言葉の続きを箸を進めながら話半分に聞いていた。


「でもでもっ!その子が駆け出して行くときに見えちゃったんだC!!」


瞬間、忍足の丸眼鏡が輝いた気がした。一体どうしたのかわからないが、俺も何となく嫌な気がする。何がだよジロー、とチキンカツサンドを口一杯に頬張る岳人は次のジローの言葉でその口の中のものを噴き出した。

「ちょっ、岳人やめや!! うっわ、日吉も大丈夫かいな?」
「……」

見事に岳人の向かいに座っていた忍足の眼鏡に、そして跳ね返ったチキンカツだったものが日吉の頭に飛んだ。チキンが、飛んだ。流石岳人だなとかそんな感想を抱く俺もやけに冷静な自分に吃驚だ。まぁそれは兎も角、ジローの言葉に一同が硬直していた。


「おい、もう一度聞くが、お前はソイツの何を見て俺たちにどうして欲しいと?」
若干引きつった顔の跡部がジローに聞く。いや聞くなよ。聞こえなかったふりして昼飯食っちまおうぜ。ああもう遅いか。


「だぁーかーらー!!座ってた俺の角度から水色のパンツが見えたんだC!んで、その子にお礼が言いたいから水色のパンツの子を探して欲Cの!」


わかった?
とでも言うように唖然としている俺たちを見るジローは無垢というかなんというか何を考えてんだお前は。何も考えてねぇのか。

更に「作戦はね〜」と続けるジローに跡部は頭が痛ぇ…と樺地を連れて出ていき、滝と日吉はいつの間にか居なくなってた。岳人はくそくそジローのせいで昼飯がぁ!!とか言って購買へ、残った忍足は何故か興味津々でジローの計画に身を乗り出すように耳を傾けていた。こんなに活き活きとしたこいつらを見るのは珍しい。

「どうしましょう宍戸さん…」
オロオロする長太郎。俺だってどうしたらいいのか聞きたい。どうしてこうなった。


「まずはこのデッK団扇を持って女子の間を宍戸がダッシュしてー…」


取り敢えず自分の身を守るためにこいつらを殴ってもいいだろうか。


2012 0203

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