小説

□青い空
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日が昇り辺りが明るくなり始め、澄んだ空気が冴えわたり鳥達の囀りが聞こえ始める。
窓から差し込む朝の光が優しく届くキッチンで、イザークはまだ夢の中にいるアスランのために朝食の仕度をしている。
癖のない銀髪を後ろで一つに束ね、ジーンズの生地で仕立てた紺色のエプロンをはおり白いカッターシャツの袖を肘の辺りまで捲し上げる。
野菜籠の中を覗き適当な物を選ぶと手際よく野菜の皮を剥く。
水を張っておいた鍋の上で食べやすい大きさに切りながら落としていく。
火をかけお玉で鍋の底をかき混ぜながら窓の外を眺めると、徹夜明けには眩しい朝日が瞳に入る。
昨夜は遅くまで膨大な量の書類整理に追われていたため帰宅することができず、ようやく抜け出せた頃には辺りの空が明るくなり始めていた。
疲れて果てすぐにでも眠りたい思いだ。
しかし、一緒に暮らし始めたアスランとはここ最近仕事が忙しくなり中々時間が合わないなってきた。
少しでも一緒の時間を過ごすために朝食だけは揃って食べようと決めた。
朝が苦手なアスラン、作るのは自然とイザークになっていた。
作るのは大変だがアスランが美味しそうに食べてくれる姿は何物にも代えられない。
時折襲い来る睡魔に耐えながら、今日も愛を込めた食事を黙々と作る。
出来上がった料理がほかほかと白い湯気をたてダイニングのテーブルに並ぶ。
色鮮やかな旬野菜がたっぷり入った噌汁、雑穀を混ぜ込んで炊いたご飯、ふわりと巻いた出し巻ききである。
最後の仕上げにと、色鮮やかに茹でられた青菜とジュール家から持ち込んだ特製ソースを混ぜ合わせている。
そろそろ起こしに行かないといけないなと思い時計を見ようとした時、ダイニングの戸を開く音がする。
どうやらアスランが起きて来たらしい。
「どうした、今日は随分早起きだな」
いつもは起こしに行ない限り起きて来ないのだが。
不思議に思いながら、青菜の和え物を小鉢に分けアスランが居るダイニングへと運ぶ。
まだ半分夢の中なのだろう、顔を俯かせおとなしく椅子に座っている。
群青が広がる海のような髪がひどい寝ぐせにより、あらゆる方向へ毛先がうねり、嵐で荒れ果てた海のようになっていた。
「相変わらずひどい寝ぐせだな」
小鉢をテーブルに置き、アスランの傍へ寄る。
苦笑しながら荒れた海にそっと触れる。
指先でうねる波を梳きながら、大人しくしているアスランの顔を覗き込む。
寝ぼけているとばかり思っていたが、予想外の展開が待っていた。
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