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□貴方に見合う人に
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貴方に見合う為に可愛くない私は努力をしようとした


「・・・ブラッド、時間帯が変わったわ。そろそろ帰りましょう」

アリスはいつもとは違った青が滲んだような綺麗でシンプルなロングドレスに身を包んでいた
髪は片方の髪を耳に掛けそこを淡いピンクローズで飾り立て足は黒のシンプルな高めのヒールを履いていた

ブラッドはいつもの悪趣味な帽子ではなくシンプルな黒いスーツに胸元には上品な薔薇のコサージュ

2人は久々にデートを楽しんでいたらしく並んで歩いていた

「そうだな。私も家に帰って茶が飲みたい・・」

男は能天気にそう返すとアリスにでは帰ろう、と小さく告げて帰る事にした

屋敷に着くとブラッドはすぐさま紅茶、と使用人に指示をして自室へ戻った
アリスはというと誘われたもののお風呂に入りたい、と言って断りそのまま風呂へと直行することにした


服を脱いでバスタオルに身を包むと温かい湯に身を沈めた
なれないヒールのせいで足の靴ずれが湯にしみ酷く痛かった



(・・・でも彼に見合う人になる為には多少の背伸びは必要よね)

小さく溜息をつくと足の傷口に容赦なく攻撃してくるお湯をガードするように手を覆いかぶせた

ぼんやりと暫く浴槽に浸かっているとヒタ、と足音が聞えた。


アリスは身構えるようにドボンッと深く身を沈めると入ってくる人に対して警戒するように扉を見詰める

扉を開けてやってきたのは先程まで一緒に居たブラッド

「ブ、ラッド」

いきなり入ってきた相手を驚きの表情で見据えると愉快そうに男は笑って「なんだお嬢さん、私が来て驚くほどの事をしていたのか?」と問い掛けた

憎たらしいほど嫌味な笑みを見て顔を顰めるといつものように冷静に別に、と答えた

風呂に入るとブラッドの薔薇の香りがして一瞬顔を赤らめたが熱いわねと言いながら誤魔化した

「ふふ、アリス…淑女がそんなに無防備ではいけないな」


スッとブラッドの手がアリスの胸へと遠慮なしに伸びて「な、」と声を震わせそれを跳ねのけようと自分の足から手を離した
それと同時にツゥンとした痛みが走りう、と小さく声を漏らしてしまう

それに気付いたのかどうした、とブラッドは言うと何でもないとすぐに答えた

「何でもないわけがないだろう。大方足でも怪我したんじゃないのか。見せてみなさい」

少し厳しくも優しい口調でアリスに言い放つとはぁ、と溜息をついて足を見せてやる

それを見てブラッドの気だるげで切れ長の冷たい瞳はスゥと見開かれた

「これは――」

「いいのよ。ただの靴ずれ。ヒール履いていたから。慣れないものはいけないわね、やっぱり」


アリスが足を戻そうとするのを阻止するかのように足を掴むとギリ、と力を込めた

痛い、と文句を言おうとした瞬間それを唇で塞がれてしまい目を見開いた

角度を何度か変えられ太股を撫でるように触られた瞬間アリスは何とか相手の肩を押しのけて顔を紅くして「風呂場で何しようとしてるのよ!!頭沸いてんじゃないの!?」としかりつけるような口調で相手を見据えた

「…、いや、ただ君のその傷が靴につけられたかと思うと何故か苛ついてしまってな」

手を離すと足が軽くなったようにパシャン、と水に沈んだ

「く、靴に嫉妬するなんてバカじゃないの」

アリスは震える声を抑えて相手を見ながらそう言い放つとブラッドはクク、と喉を鳴らして不敵な笑みを浮かべた


「男とは何にでも嫉妬するものだよお嬢さん。覚えておきなさい」

その言葉を言われた瞬間何故か体の芯がギュッと熱くなりふらりとめまいがしそうになった

「今度からヒールはやめておきなさい。君の綺麗な足が傷付く」

ブラッドはいつものように気だるげにそう呟くとアリスの髪を指に絡めてキスをした
それを横目で捉えながらアリスは小さく「そうでもしないと貴方と釣り合わないのよ…」と告げた

流石のブラッドもそれには驚いたのかいつもの余裕のある笑みが消えぽかん、とした表情でアリスを見た

だがすぐさまフ、と笑うとアリスの髪を持ち上げ項に小さなキスを1つする
それにアリスは何よ、と言いたげに睨みつけるとアリスの華奢な身体をグイ、と抱き寄せて「充分すぎるほど釣り合っているさ。…いや、寧ろ私の方が堕ちていると思うが…」と呟いた

それはない、と言いたかけたが彼しからぬ優しげな笑みを向けられ此方も自然に笑みを浮かべた

(嗚呼、いつか貴方に見合う人になるから)

fin.

(覚悟しておきなさい、マフィアさん?)

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