過去拍手

□第一回
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オリジナル



冬。


12月。


寒い。


それだけで私のテンションは駄々下がりだ。

「せめて、誰か暖めてくれたらなぁ」

学校の屋上に座り込んで呟いた、叶わない願望は誰が応えるわけでもなく寒空に消えた。
青い空から降り注ぐ太陽があっても、冬の気温には焼け石に水のようで何一つ暖かさなど感じない。

「うー、寒いっ!」

「だったらさっさと校舎内入れっての」

「うわっ」

突然頬に当てられた熱く硬い金属の缶。
視界に映らないので分からないが、恐らくこれは缶コーヒーだ。
そして、そんな事をしてくるのは一人しかいない。
私は後ろを向かずに声を発する。

「何の用ですか……先輩」

「てめえに会いに来た、って言えばいいのか?」

「別にそんなこと言ってませんけど」

いい加減頬に当たっている缶コーヒーが熱くなってきたので受け取る。
缶コーヒーのプルタブを開ければ、コーヒー独特のブラックな臭いが鼻腔を突く。

「うわ、ブラックだ。今をときめく女子高生になんてもの飲ませるんですか」

「今をときめく女子高生は屋上で油売ってねぇよ」

「煩いです」

ナチュラルに私の隣に座り込んでいる先輩に、寄りかかるように体重を預けた。

「先輩の髪って、さらっさらですよねー」

「お、何だ? 俺のかっこよさに惚れたか?」

「残念なイケメンなのは認めます」

しれっと評価して、コーヒーを飲む。
匂い通りの苦さが口に広がった。

「暖かいですねー」

「さっき寒いとか言ってただろ」

「先輩のおかげです」

「……お前、天然だよな」

「計算ですよ」

少し微笑んで、再びコーヒーを飲む。
どんなに寒くたって、結局は暖かくなるのだからここに来るのはやめられない
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