ゴミ箱
□許せない相手 出会いたくない相手
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「……よぉ」
低い声で挨拶をする。さっきまで晴れていた心に、雲がかかり始める。
「……こんにちは」
「何しに来た?」
「……お墓参りだよ」
「奇遇だな。俺もだ」
「…ハヤト」
知弦が宥めるようとして俺の名を呼ぶ。でも、俺はそれを拒む。
昨日から引き続いて晴天の空。降り注ぐ日光は、さっきまで気持ちいいと思えていたのに今はうっとおしいだけだ。
「……ナエちゃんは元気かい?」
「お前に言う必要はない」
「…すまなかった」
「ッ!!」
その一言に渾身の力をこめて殴る。
倒れた上山に近づき、胸倉を掴んで立ち上がらせる。そして、怒鳴った。
「今のは何に対して謝った? お前なんかがナエのことを聞いたことか? それとも……」
「君が可能性として考えている、全てのことだ」
「黙れ!! 見透かしたようなこと言うんじゃねぇよ!」
また、一発。
爪が手のひらに食い込むぐらい強く握って、俺は上山を殴る。
でもそれじゃ足りなくて、また殴ろうとしたときだった。
「ハヤト!」
知弦が、俺の腕を掴んで拳を止める。
その時、思った。
今の俺の行動は正しいのか? 母さんとの約束を、守れていないんじゃないか?
そんなの、考えるまでも無くて。
俺は、掴んでいた胸倉を話す。上山は身体の支えがなくなって尻餅をついた。
「なんで…なんで…なんで、なんで…」
言葉が詰まる。こいつにもし会ったら、今までに思ってきた憎しみを全部言ってやろうと思ったのに。なのに…なんで言葉が出ない。
「畜生…………」
握っていた拳を解く。爪が食い込んで、掌から滴る血なんて、今は怖くなかった。