NOVEL3

□恋愛ゲーム8
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第8話


〜初めての二人の夜は…〜




ザーッ…………

「雨、か…。」
エドガーは自分の部屋から外を見て憂鬱そうに言った。


さっきまで月の光が差し込んでいた庭は雨雲で真っ暗になっていた。

エドガーは窓辺の椅子に座ると、そのすぐそばに置いてあるポットに手を伸ばす。
リディアから貰ったミニ薔薇のポットだ。

「…まさか僕がガーデニングをするなんてね。」
エドガーは花びらを撫でる。
リディアが《世話を怠らなければその薔薇は枯れない》とエドガーの誕生日に言った。
最初は半信半疑だったが、毎日手間をかけて育ててみた。
すると彼女の言う通りになった。
この薔薇は花を開いてから数ヶ月、ずっと美しいままの状態を保っている。
リディアいわく花の妖精がいるとか言っていたが……。


「妖精ね……。」
再びエドガーはため息と一緒に言葉を出す。

「今日は独り言が多いですね。」
部屋の隅にいたレイヴンが突然口を開いた。


「ああ……なんだか雨の日は意味もなく虚しくなってね。」

「ところで、妖精、とはなんのことですか?」

「…この薔薇のポットにリディアが花の妖精が住んでいる、と言うんだ。」

「………花の…精…?」

「…お前には見えるか?花の妖精が。」

「見えません、残念ながら。それに…」

「ん?それに??」

「私にしてみれば、リディアが妖精のような存在です。」

「……………?」
エドガーは、何を言ってるんだ?という感じに口をあんぐりと開けた。


「女タラシのエドガーの遊び歩きを止めさせただけでもすごい女性だというのに……」

「遊び歩きって…。」

「まさかエドガー様を夢中にさせてしまうとは。リディア様はとてもじゃないですが人間だと思えませんね。」

「は……?誰が夢中だって?」
エドガーは驚いた顔をした。

「エドガー様がリディア様に夢中なのでしょう?」

「……………僕が……。…リディア…に…」
エドガーは言っているうちにガラにもなく赤くなってきた。

「他人の思惑や恋愛感情には敏感なエドガー様も、自分の感情には鈍感なのですか。」



………………。
そう…なのだろうか?

好きかどうかはわからないけれど、たしかにリディアは他の女性とは違う特別な存在だ。
今までになくいろいろな過去をリディアには話してしまった。
自分でも思い出したくないような過去まで。


って、そりゃそうだよ。
リディアは僕のフィアンセなんだ。
他の女性と同じで堪るか!
結婚、するんだ………し……?
……あれ?するんだっけ?
………でも、僕嫌われてない?
あれあれ???


「エドガー様…?」


レイヴンの声にエドガーは慌てて注意をこちらにもどす。


「なんだい、レイヴン。」

「いえ、具合でも悪いのかと。」

「別に悪くないよ。」

「…でもいつになく顔が赤いですよ?」

「っ!?///」

「リディア様のことを"妄想"…いえ、想像なさってたんですか?」
いつも無表情のレイヴンは、たしかに今も無表情なのだが、
なにやら深緑の瞳が面白そうに輝いている。

「…レイヴン…わかってて言ってるだろう?」

「お好きなように解釈してください。」

「…………………。」
たしかにリディアのことを考えていた。
それでもって、チラッとだけ会いたいな、と思ったのは事実だ。

「でも僕はリディアに嫌われ………っ!」

エドガーは言いながら何気なく大雨の降る庭に目をやって驚いた。


………そこには雨でビショ濡れのリディアが突っ立っていた………。






 
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