NOVEL

□Secret Conversation〜ふたりごと〜
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Secret Conversation〜ふたりごと〜
(リレー日記より)


ついさっきまで妖精についての書物を読んでいたはずだったが、知らぬ間に居眠りをしてしまったようだ。
リディアは目は開けないままで意識を覚醒させる。
すると聞こえてくるのは心地良いテノール。
エドガーの声だ。
大好きな人の声だからすぐにわかる。


「……………だよね。」
エドガーは小さな声で何か話している。
しかし、リディアは目を開けなくても、この部屋に自分とエドガー以外の気配を感じない、とはっきりわかる。
では、独り言?

少し考えてから、あっ、とリディアは気がつく。
エドガーはリディアのお腹に耳を押し当てているのだ。

『よく考えたらエドガーとあたしの他にこの子もいるから、この部屋には3人いるじゃない。』
…赤ちゃんのことを失念するなんて母親失格になっちゃうでしょ、とリディアは心の中で自分を叱り付ける。


「あ、また蹴ったな。」
突如エドガーが笑うようにそう言うのとお腹の振動が重なった。
どうやら自分のお腹の中で今日のこの子は頗るご機嫌らしい。
元気よく動き回っている。


「元気な僕の小さな妖精。キミはとても腕白なんだね。男の子かな?」
エドガーが話し掛けると再び子どもはお腹を蹴った。

「しかも悪戯っ子だったら僕に似たってことだ。」
また、振動が伝わる。



この子が人の言葉をまだ分かるはずはないのだけれど。
まるでエドガーと会話でもしているかのように反応する。

「でも、僕としては男の子でも女の子でもリディアに似てほしいな。」
エドガーはお腹を撫でる。

リディアはくすぐったくて身をよじりたい気分でいっぱいだったが、
エドガーとこの子とのいわゆる"ふたりごと"を聞いていたくてもう少し我慢する。

「だってね、リディアに似るってことはとてもいい子になるってことなんだ。」
………エドガーはどんな根拠があってそう言っているのだろう?

リディアにしてみれば、木登りをしたり探検をしたりと、まるで男の子のように走り回って、
両親ともどもを心配させる腕白っ子だった自分がいい子だなんて思ったことはないのだ。

「それからキミもリディアみたく妖精が見えるといいな。残念ながら僕は見れないからね。僕の分まで目に見える現実以上に広い世界を見てほしい。」

 
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