NOVEL3

□恋愛ゲーム(プロローグ)
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あっという間にその日はやってきた。


夕食を一緒に、ということで高級レストランで待ち合わせだ。
そしてリディアたちの方が先に着いたのだが、
リディアはさっきからそわそわしていて落ち着かない。

普段でさえ人と関わるのは苦手なのに、今日会う人は自分の《結婚相手》として紹介されるのだ。

怖い人だったらどうしよう、とか嫌われるかも、とかリディアは悪い想像をしまくり
さらに落ち着きをなくしていた。



と、そこに相手が来たようだ。

二人いたが一人は知っている。
アシェンバート社長だ。
大財閥の社長として有名だし、
父の旧友でもあるため、何度か会ったことがある。

「やあ、リディアさん、大きくなったねー。」
社長は言う。

「こ、こんばんは…」
リディアは緊張した面持ちで挨拶する。


すると、もう一人の青年がリディアに話し掛けて来た。

「キミがカールトン嬢?はじめまして。僕はエドガー・アシェンバートと言います。」

「あ、はじめまして。……リディア・カールトンです…。」


青年は光り輝く金髪と美しい灰紫(アッシュモーウ゛)の瞳をしていた。
リディアは面食いというわけではないが素直に綺麗だと思ったし、
怖い人ではない、ということにあまりにもホッとして
柔らかくはにかんだ。




エドガーは一瞬ドキッとした。
彼女の親しみを込めたような自然な笑み……


たいていの女性は僕の地位や財産が欲しいあまり
エドガーを誘惑しようと色っぽい(いやらしい)微笑みを向ける。

だからあまりに久しぶりに爽やかな優しい笑顔を向けられ、心臓が跳びはねてしまったのかもしれない。

しかし…エドガーは自分に言い聞かせた。

『ふーん、結構可愛いんじゃない?しばらくはこのゲームを楽しめそうだ。』
無垢な少女を振り向かせるというゲームを。

エドガーは心の中で不敵に笑う。


「息子さんはハーバードを飛び級してしかも会社を継ぐための勉強もすべて終えたとか?」
カールトンが言う。

「ええ、教授。勉強なんてぱっぱと終わらせて後は人生を楽しみたかったんで。」
エドガーが答える。

「しかし、そう上手くいく人は珍しいと思うのだが…」

「自分で言うのも難ですが、僕は計画(スケジューリング)が得意なんですよ。」

「それは立派なことだ。」

「いえいえ、エドガーなんてまだまだですよ。」
社長は言う。

「いや、優秀な息子さんで。」


いつの間にか三人の会話になっている。
リディアは緊張と疎外感で食がのどを通らず、
席から立ち上がった。

「あの、ちょっと外の空気を吸ってきます!!」
リディアはタターっと小走りして会話から中座した。


「リディアは一体どうしたのだろう?」
カールトンは首を傾げる。

「疲れたのかもしれんよ。」

「僕、ちょっと様子を見てきます。女性一人だとなにかと危ないですし。」
そう言ってエドガーも中座する。

「ああ、頼んだぞエドガー。」
息子に下心があるとも知らず、エドガーの父はそう言った。
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