NOVEL3

□恋愛ゲーム(プロローグ)
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「リディア、そろそろ中に戻らない?」

「え?……ええ。」
いきなり話し掛けられてリディアは驚いたようだ。

「あ、その前に。メルアド交換してくれない?」

「え…はい。」
リディアは断る理由が見つからなかったので言われた通りにした。

「じゃあ店の中に入ろう。身体が冷えるといけないしね。」
そう言ってエドガーはリディアを立ち上がらせると腰に手を回す。

「あの……」

「何?」

「この手はなんですか?」

「エスコートだよ。」

「いや、それは知ってますが……」

「?」

「あんまりこういうこと、してくださらなくて結構です……慣れていないので。」

「…………。」
エドガーはちょっと、いや、かなり驚いた。

『この僕がエスコートを断られた!?』

しかし、こんなことで引き下がるもんか、と思う。

「夜に女性の一人歩きは危ないよ。」
そう言ってエドガーは少し自棄になって強引にエスコートする。

「はあ…。」
リディアは訳のわからない顔をした。

だって……

『一人歩きって言ったって…ここ、店のすぐ前なんですけど……』
リディアがそう思っていると…

「キミは可愛いから心配なんだ。」
とエドガーは付け足した。


リディアは顔が真っ赤になっているのが自分でもわかるくらい身体中が熱くなった。


「それと、敬語は使わないで。」

「な、なんで……?」

「なんか距離を感じちゃうから。」

『いえ、あたしは距離を感じたいのですが……』
リディアは心の中で呟く。

「ね。」

「ええ……わかったわ…。」
なにせ相手は年上だ。
一応従っておこう、とリディアは思う。


しかし、今、リディアは怒りモードになっていた。

『父様、……よくもあたしをこんな面倒事に巻き込んでくれたわね!!』

「リディア、どうかした?」
エドガーに顔を覗き込まれてリディアはとっさに眉間のシワをのばした。

「いいえ、なんでもないわ。」


リディアは怒りを抑えるのに必死でいつ席に戻ったのかも、家に帰ってきたのかもわからなかった。















「面白い子だ……」
エドガーはつい呟いてしまった。

「誰がですか?」
レイウ゛ンが聞き返す。
レイウ゛ンはエドガーの世話係としてずっとエドガーのそばにいる。






エドガーは寝る支度をすっかり済ませてソファーでリラックスしていた。

「今日会った子がね。」

「婚約者様がですか?」

「うん。あんな子なら結婚《ゴッコ》をしてあげてもいいと思ったよ。」

「……………。」

「今回は面白いゲームになりそうだ。」

「エドガー様がいつも言っている《恋愛ゲーム》のことですね。」

「よくわかってるじゃないか。」

「……………。」
レイウ゛ンは何も言わなかった。
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