NOVEL3
□恋愛ゲーム1
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しかし、エドガーはリディアの腕を引っ張っていく。
「触らないで!」
リディアはエドガーを払いのける。
「じゃあちゃんとついて来て。」
エドガーはそう言うが。
「どうして貴方の言うことを聞かなくちゃいけないの?あたしはお人形じゃないわ。」
「知ってる。でもこれで君が誘拐されでもしたら僕の責任だ。」
「…………。」
「リディアには《ハーバードのカールトン教授の娘》っていう肩書きがあるからね。狙われる可能性もあるだろう?」
「……じゃあ父様が来るまで帰らない。」
リディアは小さい子みたく駄々をこねる。
「まあそれは構わないけどね。」
エドガーはそう言うとリディアが《触らないで》と言ったにも関わらず、
違う方向にリディアを引っ張っていく。
リディアはリディアで反抗するのがめんどくさくなってただ黙っていた。
「ここ。」
エドガーが急に立ち止まる。
リディアが辺りを見渡すと、どうやら薔薇園だということがわかった。
無心だったので気づかなかったのだ。
「ここはね、アシェンバート家の自慢の場所。綺麗だろう?」
「…ええ。」
そこは素直に綺麗だと思ったから態度を和らげて答えた。
「じゃあここで二人で語らおう。」
「それは嫌。…というかどこから《じゃあ》が出てきたのよ。」
「…うーん、…僕は君のことよく知らないじゃん?」
「知らないままでいいと思うわよ?」
「僕は知りたいわけ。それでリディアにも僕を知ってほしい。」
「大体予想はつきますが?」
「だって、君が知っているのは僕が跡取りだってことと、女たらしだってことだけだろ?」
「まあ、そうだけど……。というか《女たらし》だっていう自覚はあったのね。」
「うん、こうなったのにも原因が…」
「え?」
「いや、何でもない。」
リディアはエドガーのことをじーっと見た。
なんとなく、本当の、何のベールもかかっていないエドガーをかいま見た気がした。