NOVEL

□愛しても愛しても、愛し足りない
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さて、ケリーに夜会用のドレスに着替えさせたれたリディアは
しぶしぶ、といった様子で夜会のきらびやかな舞台に足を踏み入れた。


エドガーに付けられたうなじのキスマークはケリーが首飾りやカールさせた髪で隠してくれた。
そういうところはさすがケリーだと思う。


さて、エドガーを探さなくちゃと思ったが、探し出すことにはそんなに苦労しなかった。
それはやはり彼の存在自体が目立つからである。
ただ、今日は違う理由も加わっていたようだ。

エドガーが誰かと踊ってる。
髪はブロンドで肌は透き通るように白い。
瞳はリディアよりもくっきりした深い緑色。

そして、誰もが公認するほどの美少女だ。
名前はよく知らないが、別の夜会で見かけたことはあるから有名なのだろう。



やっぱりエドガーは、ああいうレディの方が好きなのかしら?
リディアはぼーっと、少女と楽しそうに踊っているエドガーに魅せられた。

そして、不意にエドガーが自分に気づいた瞬間、我に返った。














「リディア……。」
エドガーは驚いて一瞬言葉を失ったようだ。


「あっ……。」
リディアもなんとなく気まずくと言葉を探す。
しかし…


「なぜ、きみがここに…?」
エドガーがそう言った瞬間リディアは踵を返した。

まるで、ここに居るのが悪いことのように言われて不快になったのだ。














リディアは走ると、涼しい風が吹き抜ける庭へと出た。
ドレスが重いせいだろうか?
だいぶ息切れしている。


「リディアっ!」
後ろで聞き慣れたテノールに呼ばれた。
ただ、今の自分は最後に不細工な顔をしているだろうと思ったから振り向きはせずに言った。

「あたし、帰るわ。邪魔しちゃってごめんなさい。」

「邪魔とかそういうんじゃなく…」
「やっぱりエドガーも、ああいう美人な人がいいわよね。」
リディアはエドガーの言葉を遮って喋る。

「は?何の話だ?」
いきなりそんなこと言われてもエドガーの頭はまだそこまでついていけてない。

「後悔してるでしょ。頑固で、美人でもない妻をもって。」
そう言った次の瞬間にはリディアはエドガーに手首を捕まれていた。


よくわからないけれどエドガーはきっと激怒している。
彼を取り巻く気配が、なにより彼の瞳が怒ってる。

「どうして怒るの?」

「どうして?リディアはそんなこともわからないのか?」

「わからないわ!あたしは…」

「きみは僕を侮辱した。きみを愛して止まない僕をね。」

「嘘つき。」

「何が?」

「さっき、楽しそうに笑ってたわ。あたしといるときよりずっと楽しそうだったわ。」
リディアの手首を捕らえているエドガーの手に力がこもる。


「い、痛いわっ…離して!」

エドガーはそう言われて始めて自分の手に力が入っていることに気づいたようだ。
少し驚いたようにリディアの手を離した。
だが、代わりにエドガーの腕がリディアの腰に回る。

この密着するような体制にリディアは慌てた。


「離してって言ったじゃない。」

「嫌だ。」

「エドガー、離してっ。」

「っ…やだ。」
エドガーは離すどころかリディアを抱き寄せた。


 
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