NOVEL3
□恋愛ゲーム9
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その後、"冗談よ。お兄様を困らせたいわけじゃないの"と言ったフェリシアは、
いつもの調子を取り戻して、僕は彼女と世間話を少しして、電話を切った。
「エドガー様。」
気づくと背後にレイヴンが立っていた。
「どうした、レイヴン。」
「モテるというのも大変なようですね。」
「うーん…というか僕はリディアにだけモテたい。」
「ならばそれは昨日成就したのですよね。」
「まあ、そうだね。」
"エドガーが好きなの!!"
彼女は昨日、たしかに僕に向かってそう言い放った。
どういう心境の変化なのだろうか?
だって、あまりにも突然すぎる。
ついこの間まで"女タラシは嫌いよ"という言葉を、耳にタコができるくらいに繰り返し僕に言い続けた彼女なのに。
「驚きました。」
レイヴンがぽつりと言った。
「何に?」
「リディアさんも普通に女の人なのですね。」
「なんだよ、男にでも見えていたのか?」
「いいえ。ただエドガー様になびかなかったので"普通"ではないと思っておりました。」
…たしかに、ね。
それにしても…もう"恋愛ゲーム"という観念は僕の中からすっかり消えてしまったからいいのだが…
もしゲームを続けていたとしたらどちらが勝ちだったんだろうね?
あながち勝者はリディアだったかもしれない。
たしかに僕に対して先に想いを告げたのはリディアだが、
先に恋したのがどちらか、とははっきり言いきれない。
「エドガー様が幸せな恋愛をできることを祈っています。」
「どうしたんだ、急に。」
「エドガー様がリディアさんにたくさんの愛情を注げば、リディアさんはエドガー様をおいていったりはしないでしょう。」
…その言葉で僕はようやく理解した。
僕はレイヴンにずっと心配をかけていたようだ。
そう、アーミンがこの世を去った時から。
あの時15だった僕は……彼女を泣かずに見送った。
ただ、その後から僕はだらし無い男女の駆け引きに墜ちて行った。
だからレイヴンは心配していたのだろう。
誰よりも僕に忠誠を誓ってくれる従者だからね。