NOVEL3

□恋愛ゲーム10
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いや、むしろメールしてほしくないんだけど…。
と、リディアは狼狽する。

どうせ内容はエドガーのことに決まっているのだ。


「あ、リディア…?」
どうしよー!、とリディアが本気で悩み始めた時に背後から声を掛けられる。

「ダネル!?」
ちょっとびっくりする。
彼はバイオリニストとして海外に行っていたはず。

「そんなに驚くことだった?」

「うん。フランスに行ってたんじゃないの?」

「まあたまには僕だって帰ってきたくもなるさ。」

「ふーん。」
彼はリディアの幼なじみで、彼女が気の許せる数少ない知人である。

「ところでリディアは何をやっていたんだ?」

「ショッピングよ。」

「ひとりで?」

「さっきまでひとりじゃなかったけど連れが帰っちゃったの。」

「………。なら、僕とする?」

「へ?何を…?」

「買い物。」

「えぇぇぇえええ!?」

「街中で奇声を発さない!」

「き、奇声ってひどい…。」

「だってリディアが声をあげたらさ、周りの人は僕がおまえにへんなことしたみたいに見えるじゃん。」

「…そ、そうね…?」
やめて、痴漢っ!とか一度くらい言ってみたいなと思ったのは秘密。
そういえばあたしは、電車に乗ろうがなにをしようがそういう被害にあったことがない。
つまり、変態サンですらあたしに魅力を感じない……?

いいもの、わかってたもの。
リディアはそんなことを考えてむくれる。

「なに膨れっ面してるんだよ。」

「べつにー。何でもないわ。」

「まったく、おかしなやつだね。」

「あたしはモテないって話よ。」

「婚約者がいるんだろう?」

「…うん、いるにはいるんだけど。」
その婚約者を取り巻く色恋が前途多難なのよね。
とリディアはこっそり呟いた。

「は?何だって?聞こえない。」

「聞こえなくていいの!」

「婚約者の悪口なら大歓迎なんだけどね。」

「どうして?」

「僕とイアンからリディアを取ったからじゃない?」

「取ったって…別に情熱的に愛し合ってる恋人じゃないし……ただの幼なじみよ。」

「………まあ、リディアの鈍感は今に始まったことじゃなかったよね。」
彼は小さくため息をついた。

 
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