NOVEL3
□恋愛ゲーム11
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さて、リディアに置いて行かれたエドガーはムスッとしながらシャンパンを喉に流し込む。
僕はリディアのフィアンセだよね?
しかも、互いの親公認の。
それなのに…
『リディア、歩くの早いよ』
『貴方と離れたいの。ついて来ないでくれる?』
『フィアンセをエスコートするのがパーティーってものなんだけど』
『いやよ』
と、彼女は一言で僕を拒絶する。
『なぜ?』
『貴方といると恥ずかしいの。あ、貴方の吐く言葉が恥ずかしいって意味だから』
…僕の言葉が恥ずかしいだって?
僕の精一杯の愛情表現だというのに…。
しかしながら、今まで女性にあそこまで辛辣な言葉をぶつけられたことのないエドガーは
リディアの自分に対する"好き"を実感できないでいた。
「リディアって本当に僕のこと好きなのかな?」
「あら、リディアを怒らせたの?」
背後から聞き慣れたソプラノが響いたのでエドガーはしぶしぶ振り向いた。
「やあフェリシア。きみも来てたのか」
「まあラモットの令嬢ですから」
「よく父上が許してくれたね」
「最近は身体の調子が良いのよ」
「そう。それはなによりだ」
「……素っ気ないのね。この間まではあんなに構ってくださったのに」
「僕は……彼女が好きだ」
「知っているわ」
「だから、"兄"としてきみに何かしてあげられることがあるとしても男としてはない。何も期待しないでほしい」
「期待なんてしていないわ。いずれエドガーは私がよくなる」
彼女は"お兄様"と言わなかった。
もちろん社交的な場であるから親密な名で呼び合ったりはしないのだが、エドガーにはなんだかひっかかった。
「ならないよ。彼女以外いらない」
「あら、元プレイボーイらしくないわですわね」
「……それは何かの嫌みか、フェリシア?」
「いいえ。ただ、リディアのように純粋で清潔なレディに貴方のような男は似合わないのでは?と思っただけ」
…その言葉にエドガーは詰まった。
彼も気にしていたことだ。
彼女のことが好きで離したくないと思っている。
その反面、自分が彼女に触れることで彼女が穢れてしまうのではないかということを恐れてもいたのだ。