NOVEL
□ある日の出来事
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ある日の午後。
「ケリーさん、ニコさんを見ませんでしたか?」
滅多に喋らないレイウ゛ンに話し掛けられて、ケリーは内心3bほど飛び上がった。
「え、…?」
「だから、ニコさんを…」
「あ、ああ、さっき庭で見かけましたよ。」
ケリーは慌てて答える。
はっきり言って、レイウ゛ンはケリーにとって怖い存在だ。
暴力するとかそういうのではなく、レイウ゛ンが無言で醸し出す雰囲気が怖いのだ。
「困りましたね…」
レイウ゛ンが呟く。
「えーと、ニコさんがどうかしたんですか?」
「焼きたてのパイを食べたいと言っていたのですが……」
『ん?この会話、前にも一度したことがあるような…』
「もうすぐ15分たってしまいます。」
レイウ゛ンはたんたんと言う。
「たしか、15分たつと冷めたパイになるんでしたよね。」
ケリーは一応あいづちをうつ。
「………なぜ知ってるんですか?」
「レイウ゛ンさんが前に《エドガー様が教えてくれたのです》って言ってましたもの。」
「そう…ですか…」
どうやら覚えていないようだ。
レイウ゛ンは本当は自分の主人が過去に付き合っていた大量の女性の名前をアルファベット順に言えるくらい記憶力がいい。
しかしそれは、自分の主人である《エドガー様》とその奥方のリディア、
そして、友達であるニコに関することにしか働かない。
『ハァー。』
ケリーが心の中で盛大にため息をついた時にティールームの扉が突然開いた。