NOVEL

□愛しても愛しても、愛し足りない
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〜愛しても愛しても、愛し足りない〜


【結婚後エドリディ】



「まったくきみは…良くも悪くも意地っ張りだね。」

「…エドガーがいけないのよ。あんなところに…跡…つけるから…。」
リディアはむすっとしながらソファーに座っている。

「いいじゃないか。僕のものって印なんだから。」

「みっともないじゃない…。とにかく夜会には行かないから。」

「暗に僕に一人で行けってこと?」

「暗にじゃなくて明らかにそう言ってるでしょ!」

「…わかったよ。…今日は遅くなるかもしれない。」

「なんで!?」

「さあ、なんでだろうね。」

「浮気?」

「はー…冗談だよ。ちょっとスレイドの所に寄ってくるだけ。」

「そう……。」

「心配なら一緒に来れば?」

「行きません!」

「後悔しても知らないからね。」
エドガーはそう言い残すとプライベートルームを出て行った。


「えっ…ちょっと…どういう意味??」
リディアはあんぐりと口を開けたまましばらく固まっていた。



















さて、そういうわけでエドガーは一人淋しく出陣してきた。
最後に落とした爆弾は単なる冗談である。
今やエドガーはリディア以外のレディと関係を持つ気なんて毛頭ない。
ただ、ちょっとばかり意地っ張りなリディアに対する意地悪をしたかったのだ。
意地っ張りなところがまた可愛いと思うこともあるが、
今はとにかく僕を一人で夜会に行かせたリディアに腹が立っていたのだ。


……キスの跡くらいどーでもいいじゃないか……。


エドガーはため息をついた。


「やあ、エドガー。麗しき奥さんは?」

「………………。」
そのことについて今触れるなんてタイミングが悪すぎやしないか?
エドガーはそんな思いを込めてスティーブンを睨む。

「なんだ、エドガー一人なのか。」
スティーブンはエドガーの視線を的確に読んだ。

「…一人で悪かったね。で、リディアがいたらどうしてたんだ?」

「ぜひ一度ダンスに誘おっ…痛っ」
エドガーは苛立ちに任せて足を思い切り踏ん付けてやった。

「スティーブンは一度地獄を見てみたいのかな?」

「別にダンスくらいいいじゃないか。」

「いいや、僕のリディアだ。僕が許可しないかぎりダメだ。」

「…すごい溺愛っぷり。」


「あの…。」

そこに第三者の声がする。


「ああ、これはミラ・ポワティエ伯爵令嬢ですね。」
スティーブンがご機嫌で挨拶する。

「ええ、こんばんは。ところでアシェンバート伯爵…」

「はい、僕に何か?」
エドガーは急いで仏頂面に愛想よい笑顔を張り付ける。

「今日は奥様は…?」

「ああ、リディアに用事かな?残念だけれど彼女は今日は来てないんだ。」

「そうなんですの。」
そう言った彼女は少しも残念そうではなかった。
むしろ目をキラキラと輝かせた。

「でしたら伯爵、お暇でしょうからわたくしと一曲踊りませんか?」

エドガーは心の中で舌打ちした。
…今は全然踊りたくもエスコートしたくもない。

「いや、僕は…」
「エドガー、踊ってきなよ。ミラ嬢のような美少女と踊る機会なんてそうないだろう?」
スティーブンが横から口を出す。
………今丁重に断ろうと思っていたエドガーにしてみたら有難迷惑でしかない。

 
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