if(君☆届け パラレル)


□部下に告白
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部下に告白 前編




「コーヒーをお持ちしました」

「あ、ありがとう」

「失礼します」

「あ・・・」



手を伸ばしてまた引っ込める
今日何度この場面を繰り返してきただろうか


俺の小さな呟きは届かずにそのまま部屋を出た黒沼
ガラス越しに黒沼が自分のデスクに座ったのが見えた


ピンと伸ばした背中



「はぁ・・・」



大きなため息が静かな部屋に響いた


あの日、皆で飲みに行った日
偶然にも俺の親友の奥さんと黒沼が親友だと知った


初めて会った時から俺は黒沼に惹かれていた
そしてあの日の飲み会からもっと好きになった


だから、知りたい
黒沼の事知りたい



もっと欲が出たんだ



“ご飯でも食べに行かないか?”
なんでこの一言が言えないんだ?
普通に誘えば良いじゃん?

この歳になって今更何を躊躇ってるんだ?
いや、俺はそれなりの適齢期だけど・・・
黒沼にしたら俺っておじさん?


5歳も違うんだ


いやいや、龍だって吉田と・・・
同じ歳の差じゃん?



あぁ、ちょっと頭冷やそ


思考が可笑しくなってきて俺はパソコンを閉じて部屋を出た



あれ?


あ・・・そっか昼休憩か



部屋を出れば事務所には誰も居なくて
時間を確認すれば昼休みの時間だった


だからコーヒー持ってきてくれたのか
黒沼のそんな小さな心遣いにまた好きになる


ヤバイな


どんどん好きになっている

歯止めが効かなくなってきている
この歳で可笑しいけど・・・
これって初恋か?


こんなにも人を好きになったことなんて無い



ギーッと嫌な音を立てて重たい扉を開けると青空が広がっていた


ベンチに腰を掛けて大きくまた、ため息を吐く


熱いくらいの日差しの今日は
屋上であるここで食事をしている人も少ないみたいだ



「ずっと・・・見てたんだ・・・
 す、好きなんだ・・・俺と付き合って欲しい」



げっ!
ふいに聞こえてきた内容に思わず身体を捩る


辺りを見渡せば声だけで
姿が見えなくて安心する
壁の向こう側らしい


人の告白なんて聞いてる方が恥ずかしいって///

相手もきっと俺が居る事なんて気付いてないのだろうけど

はぁ、動くに動けないな



「あ・・・ご、ごめんなさい」



!!!!!


この声!
黒沼??
え?え?
告白されてるのって黒沼??


ごめんって事は・・・
その事に気付いてホッとする自分が嫌になる


俺は告白どころか食事にも誘えないのに

情けないな



「好きなやつでもいるの?」

「・・・・・・ハイ」



!!!!!

好きなやつって・・・
好きなヤツ?
え?マジで?


一気にテンションが下がるのが解った



「そっか・・・でもさ、また話はしていいかな?」

「も、もちろん!!」

「はは、良かった!聞いてくれてありがとな」

「−−っっ!!」

「じゃぁな」



チラッと扉を見れば男の背中が見えた
何となく見たことのある背中


まぁ、会社が同じだしな



“また話しても”って言ってたし黒沼とも仲が良かったのだろう
そんな風に仲の良い男が居た事も知らなかった


好きなやつ、か




ぐすっ



「黒沼?」

「わっ!!」



聞こえてきた鼻を啜る音に
泣いてるのかと思って思わず声を掛けてしまった
姿は見えないのに声が聞こえて来たことに驚いているのが解った



「な、泣いてるのか?」

「・・・・・・か、課長?」

「あ・・・・・」



思わず声を掛けてしまったけど・・・


これヤバイんじゃ・・・


所謂、覗き?
いやいや、知ってたわけじゃないし
居るなんて知らなかったんだし!!



気まずい空気が壁を挟んで流れていた



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