長い妄想(君☆届連載)U


□彼の彼女
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彼の彼女 前編



あー……


痛い
だるい


腰を擦りながらガラッと保健室の扉を開ければ先生と目が合った



「そろそろだと思ってたわよ」



その言葉の意味はよく理解していた

何かを言いたくても言えない状況を察知してくれた先生は
優しくベッドへと誘導してくれた


横になればふわりと布団を掛けてもらってやっと落ち着いた



「いつもより辛い?」



コクリと頷けば“顔色が悪いわね”と額に手が触れて
額から流れるその温もりに安心する



毎月来るツキノモノ


それが酷くて毎月保健室にお邪魔してしまう程



休めば良いのだけれど……


それが出来ないのは何故なのか………
会いたい人でもいると言うのか……


先生の温もりに少しずつ目蓋が下がって行く



「せんせーっっ!!」



突然騒がしくなった保健室に下がりはじめた目蓋がバチッと上がる



先生はため息をついて“ゆっくり休んでなさい”と言って声の方へ向かった


カーテンで仕切られた向こうで先生はうるさい生徒を怒りながらも
熱が出たらしい生徒を診ている様だった



「風早くん、とりあえず寝る?
 親御さんには連絡して迎えに来てもらいましょうか?」

「はい、寝かせ、て下さい……連絡は、いいです、寝たら一人で帰り、ます」



え?

え?


風早?


聞き逃せない名前だった


息が苦しいのか途切れ途切れに話す声は……やっぱり



それは……ずっと好きだった男子


ううん、今でも………まだ


叶わない恋だと解っている
嫌でも解らされた



カーテンの向こうで動く気配を感じる



ドキドキ



「風早ー大丈夫かぁ?わーっ、先生!風早がーっ!」

「城之内くんっ!うるさい!授業中でしょ?もう戻りなさい!」



“えー”とか“あー”とか言いながらやっとジョーは出ていった


相変わらず騒がしいヤツ!


ふっ、と小さく笑って少しだけ痛みも和らいだ気がする



「とりあえず、今は寝てなさい」

「はい」



薄いカーテンの向こうに風早が寝てるの?


わっ!どうしよう!ドキドキが止まらない!


先生だって居るのに!



「大丈夫?」

「え?あ、はい!」



先生がカーテンを開けて小さな声で聞いてきた



「隣の子具合悪いみたいで寝てるの
 私、ちょっと用事があってね、ここ空けてもいい?」

「あ、大丈夫ですよ」

「職員室に居るから何かあったら内線で連絡してくれる?」



毎月通っているうちに何度かこういう事もあって
内線の掛け方まで教えてもらった


いちお先生が不在の時には誰でも掛けれるように
電話の前にも方法は貼ってるんだけど



「はい」

「あ、隣の子は寝てるみたいだから」



あ、そうだった!


風早が寝てるんだ!



先生が出ていった気配を感じて落ち着いていた心臓がまた煩くなる


風早と二人きり!



休み時間になればまた煩いヤツらが来るだろう


それまでは……



ちょっとだけ、そう思いながらカーテンを少し開けた



スースーと規則正しい寝息


横顔からも顔色が悪いのがわかった


頬は熱で赤いのに全体的にはやっぱりしんどそう



「風早……」



聞こえるか聞こえないかの小さな声で名前を紡いだ



諦めたつもりだった



でも……



「風早……私………」



コンコン



小さなノック音が聞こえて慌ててカーテンを閉めて布団を頭から被った



「失礼します………先生?」



女子の小さな声


聞いた事ある、声だった











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