君☆届妄想(風×爽)U

□初恋果実
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初恋果実




「わっ!懐かしいね!」

「あっ、ホントだ!懐かしいなあ!」



黒沼と付き合いはじめて休日に二人で出かける事にも少しずつ慣れてきた


今日は何時もより遠出をして街に出て
不意に立ち寄った雑貨屋に懐かしい物を見つけた


まだ俺たちが小さかった頃に流行ったアニメがまた人気が出ているのか
そのアニメのキャラクターの雑貨が置いてあった



「黒沼も好きだったの?」

「うん、特に……」



少し頬を赤らめて“これ”指差したのは
主人公では無いけれど人気のあったキャラクターだった



「へぇー、俺はこれかな?」



二人でなんとも他愛ない会話


でもそんな事に幸せを感じでしまうんだ





「ホントに好きだったの……」

「へぇ……」



店を出てからも黒沼はどこか上の空



なんとなく……ムカつく



なんだよ、ただのアニメじゃん!

そう言い聞かせるのは


黒沼に……なのか
俺自身に……なのか



そのキャラクターはスラッと長身で格好良くて……
アニメじゃなかったら芸能人かって感じ?

現実離れした格好良さに
小さい頃なら誰でも憧れたり好きになっても可笑しくない


俺にとっても一番では無くても好きなキャラクターだった



「憧れちゃうなぁ」



やっぱりムカつく


余りにも懐かしげに頬を染める姿は
初恋のヤツを思い出してるみたいで



「ダメ!」

「え?」



繋いだ手にキュッと力を込める


そんなのみっともない嫉妬だ
しかも、アニメのキャラクターに


でも、なんかダメだ



「それって初恋?」

「え?は、初恋〜?///」



驚きながらも真っ赤になる姿は
その言葉を肯定している様で胸がツキンと痛んだ


初恋なんてみんな幼稚園とか小学生の
過ぎ去った思い出として笑って話してるじゃん!


それと同じ


でも黒沼から語られるそれには納得できない


例えアニメのキャラクターでも!



それに………


俺にとっての初恋は黒沼なんだ



アニメのキャラクターにもこんな想いを持った事は無い


黒沼と出会って……初めてなんだ



「そんな話聞きたくない!ダメ!」

「え?え?あの……」



俺の我儘に黒沼がアタフタしている



ただの嫉妬
独占欲



過去の黒沼にさえ嫉妬してる



「ち、違うよっ!」

「え……」

「や、やだ、勘違いしないで……
好きだったけど……風早くんへの好きとは全然違うの……
私の初恋は風早くんなのっ!だから……」

「う、うん///」



あーーっ、もうっ!


ホント俺って……


ガシガシと頭を乱暴に掻き毟る



「俺だって初めてだからねっ!」



真っ直ぐに漆黒の瞳を見据えて伝える


この真っ直ぐな瞳に映る自分を見れなくなった事もあった


すれ違って目を逸らしてしまった事もある



でも、もう……逸らしたくない


伝えたい


恥ずかしくても……
情けなくても……



「俺の初恋も黒沼っ!///」



恥ずかしさを埋めるように半ば怒ったように言ってしまい後悔する


伝えるならちゃんと、優しく伝えたいのに……



黒沼の前だとうまくいかない



「ーーっ、うん、そういう事っ!///」

「………」



いつもの黒沼ならここで“サービス?”とか“私もっ!”とか
俺の想像を超えるような事を言うのに
何も言わない黒沼に、さっき怒るように言ってしまった事を思い出して
隣の黒沼をこっそりと見た



「黒沼っ?」



泣くのを我慢している黒沼がいてまた後悔した


でも―――



「嘘だね……」

「え……」

「初恋は実らないって言うけど……」



潤んだ瞳に胸が高鳴った


純粋過ぎて困る程
綺麗過ぎて困る程


でも、自分が映っていたい



「初恋……実っちゃった」



ふわりと笑う彼女にもう押さえる事なんて出来なかった


少し強引に路地裏に引っ張って行って


―――抱き寄せた



「ずっと実ったままだからねっ!」

「うん///」



遠慮がちに背中へ回された手に愛しさが込み上げる


両想いって奇跡だ


俺たちの初恋は朽ちる事なんて無い


ずっとずっと…………









お付き合いありがとうございました
こちらはゆうき様から頂きましたリクエストになります
《高校生の風爽で爽子が昔アニメで見た好きなアニメのキャラの話しを聞いて
やきもちを妬く風早が見たいです!》とのリクエストでした
書きながら馬鹿だなあなんて思いながら
二人のまだ緊張してる感じを書いてみました
楽しんで頂けましたでしょうか
リクエスト下さったゆうき様
お付き合い下さった女神様
ありがとうございました





2011/11/07 翠
 

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