記念部屋

□20万HIT記念
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「彼女いるの知ってるけどそれでも良いから・・・付き合いましょ?」



身体のラインを際立たせる服に
これでもかって程に塗っている化粧

遠く離れていても鼻につく香り


きっと男なら飛び付くようなその姿

上から目線の言葉には後腐れの無さを醸し出す


きっと、俺には一番・・・苦手なタイプだ



「・・・・いいよ」



そう答えてしまったのは何故だろう


別に目の前の女の子が好きでもなんでもない
寧ろ彼女とは正反対のその姿には何の魅力も感じない


俺が好きなのは何があっても彼女だけだから


それなのに・・・
そう答えた理由は自分でも解らなかった


それに・・・
そう答えた事に罪悪感も何も感じられなかった



「ふふ、じゃあ、楽しみましょう?今からでも・・・」



楽しむ?
何を?


身体を擦りよせて触れる身体が気持ち悪かった

漂う香りに酔いそうになる

人工的な不快な匂い



咄嗟に身体を離して軽蔑の眼を向ける



「なに?」



自分にそんな冷たい声が出る事に驚いた

軽蔑の目は目の前の彼女には何の効果も無いらしく
更に上目遣いに誘ってくる



「ふふ、可愛いのね、彼女には内緒にするわよ?
 彼女に飽きたでしょ?私なら・・・」

「必要ないよ」



触れられる前に
ただ、それだけを伝えた


目を見開いて怒りをあらわにするその子


名前も何も知らない
知りたくもない


だって、知っても呼ぶことなんて無いのだから


―――必要ない



俺の口が紡ぐ名はただ一人だけ
俺の身体が欲するのは一人だけ



「じゃあ、何をするっていうのよ!」

「別に・・・何も?」

「な、なにも・・・って・・・
 私も・・・・・彼女でしょ?抱いて良いのよ?」

「はっ・・・」



渇いた声が漏れる


抱く?
誰を?


飽きる?



「俺の彼女は一人だけだけど?」

「で・でも!今、いいよって・・・」

「好きにすればいいってことだよ」



俺は背中を向けた


これ以上俺の目に映す必要はない



「か、風早くん!」



俺の腕に触れる細い指


だけど・・・俺の求めてるものじゃない
綺麗に飾った爪



「翔太・・・」

「呼ぶな!」



名前を呼ばれてぞっとした


自分の名が穢れた様な・・・そんな気がする



そう呼んでいいのは・・・


俺は腕を振り払って去った


好きにすればいい・・・

彼女と名乗るなり
付き合った気分になったらいい


だけど俺の求めてるのは一人だけだ

それは揺るがない事実





「翔太くん?」

「爽子?」



触れられた身体が気持ち悪くて
ムカムカする気持ちを携えながら歩いていると電話が鳴った


着信音で誰かなんてすぐわかる


名前を見ただけで気持が昂ぶった

機械を通して耳に響く声に心が震える

呼ばれる名前に気持ちが落ち着いていく



「今日・・・行っても良い?」

「え?」

「きょ・今日休講になって早く終われそうなの・・・///」

「うん!会いたい!」



素直な言葉が出てくる

俺を簡単に喜ばせてくれる人



「きっと、私の方が早いと思うんだけど・・・待ってて良いかな?」

「待つって・・・お・俺の家で?」

「うん・・・この前・・・合鍵もらったし・・・///」

「うん!待ってて!終わったら直ぐ帰るからっ!」



弾む声は彼女に会えるから


好きで好きで仕方ないんだと思い知る



会える彼女の姿を思い浮かべて電話を切った


足取りが自然に軽くなった




続き

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