記念部屋

□20万HIT記念
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「すき?」



ほんの少し首をかしげて

可愛らしく聞いてくるのは・・・

爽子ではない女の子


大きな瞳に吸い込まれそうになる

そっと頬に手を添えれば

頬をすり寄せてくる



「好きだよ・・・」



そう答えるのはもちろん俺

好きだという事に抵抗なんてない


俺が好きだといえば嬉しそうに笑う

大きな瞳が揺らぐ

そんな笑顔に俺まで嬉しくなるんだ


ほんの一年程前には彼女にしか言えなかった言葉を

俺は彼女以外にもすんなりと言ってしまう


罪悪感なんて無い


最初は抵抗があった


どうだろう・・・

そんなものあったのだろうか

最初から抵抗なんて無かったかもしれない



黒沼、風早くんと呼び合っていたあの頃から

俺達は何度も同じ季節を過ごしてきた


手を繋ぐ事に必死だったあの頃

初めて口付けて・・・

初めて身体を重ねて・・・

お互いの初めてを二人で分かち合った

溢れだす想いを伝えあった


いつの間にか

爽子・・・翔太くんと呼び方も変わって行った


どれだけの月日が経とうと

彼女への想いは変わることはなかった


変わったのかもしれない・・・な

どんどん好きになっていった


今でもその想いは加速している

昨日よりも今日

日増しに溢れている


ただ・・・彼女だけではなくなったって言うだけの事


好きだと伝えるのも・・・

きゅっと抱き締めるのも

彼女だけでは無くなった


ただ、それだけの事


彼女の事は今でも大事だし大好きだ

今でも俺の一番は爽子だけ

それは、今もこれからも変わることは無い


俺の気持を持っていくのも爽子だけ・・・


我がままかもしれないけど・・・


俺は爽子がいなければ生きてはいけない


それなのに、俺は彼女以外にも想いを伝えるんだ


爽子もきっと気付いている

だけど何も言って来ないのを良い事に

俺は彼女の優しさに甘えている



本当は俺も知っているんだ・・・


爽子が・・・俺以外のやつに好きだと言っているのを・・・

俺以外を優しく抱き寄せている事も


不思議とそれを知った時に嫉妬心は生まれなかった


いや、嫉妬した


だけど・・・

もうそれを伝えるほど子供ではなくなっていたのだろうか


俺が彼女を求める様に

彼女が俺を求めるのも知っていたから


本当に好きなのは・・・

愛しているのは俺だと知っているからなのか


昔ならそんな自信は無かった

だけど過ごしてきた時間がそう思わせてくれる


彼女も同じなんだと


俺が彼女以外に好きだと言っても

彼女が俺以外に好きだと言っても


―――お互い求めているから



「もうすぐかな」

「あ・・・そうだな、もうすぐ帰ってくるかも」

「かくれる?」

「ははっ!そうしようか?」



カチャと鍵が開く音がして慌てて二人で身を潜めた

悪いことをしているからか少し気分が高まる


見付かったらどんな顔をする?


見つけてほしいのか・・・そうでないのか・・・



「あれ?翔太くん?」



名前を呼ばれれば

すぐにでも出て行って抱きしめたくなる衝動は

目の前の悪戯顔の女の子に止められる



「翔太くーん?」



パタパタと探す音に耳を傾ける





「・・・・パパ?」



降参!

彼女は知っているんだ

俺が彼女にそう呼ばれることに弱い事を



「あーーパパでちゃだめだよ!」

「ごめんごめん」



一緒に隠れていた小さな女の子を抱きかかえた俺と

女の子よりほんの少し大きな男の子と手を繋いだ爽子


君のだけだったはずなのに


いつの間にか大事な声が増えていった


「おかえり!」

「ただいま」














20万HITお礼SS第三段になりますー!
お題に添えてる?
ってか、終わりかけの恋じゃない〜
でも、ちょっと気に入ってます
どうでしたか?
翔太→娘へ、爽子→息子へです
騙されてくれたかな?もう最初からわかってた?
そんな事を考えて私はワクワクしてました
お付き合いありがとうございました



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