記念部屋

□20万HIT記念
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「ただいまぁ・・・あれ?爽子ー?」



大学に入って一人暮らしを始めた

ワンルームの小さな部屋だけど俺には充分だった


居るはずの彼女の姿が無い


“お帰りなさい”そう言ってくれると思っていたから
少しテンションが下がってしまう


靴を脱いで部屋に入れば
仄かに彼女の香りが残っている

って事は・・・来てたんだよな?


彼女の靴が無い
用事が出来たのだろうか?


でもそれなら連絡があるはずだ


俺は携帯を取り出し彼女へと繋げる



「も、もしもし」



思っていたよりも彼女の暗い声に不安が募る

何かあったのだろうか?



「爽子?どこにいるの?」

「・・・・・」

「どうしたの?」



沈黙が怖い

嫌な予感がする



「ご・ごめんなさい・・・私・・・知らなくて・・・
 浮かれて・・・勘違いして・・・」

「え?な、なに?」

「自惚れてました・・・・」

「さ・爽子?」

「彼女の・・・邪魔になってしまうので・・・・」

「え?彼女?邪魔?」

「私の事は・・・気にしないで・・・
 大丈夫なので・・・・別れて下さい」



心臓が止まるかと思った


夢だと・・・
嘘だと・・・


“別れ”の言葉がこんなに簡単に紡がれるもんなのか?



「ちょっと・・・爽子!待って!何それ?
 彼女って?邪魔って何?どうして俺たちが別れるんだよ!」

「・・・・・・・新しい彼女が出来た・・・んだよね」

「あ・・・」



その言葉に、ほんの少し前の出来事が蘇る


“いいよ”と言ったのは俺


例えそれが自分にとっては彼女と認識していなかったとしても


それは・・・

裏切りとも取れる行為



「ち・違うんだ!あの子は彼女なんかじゃない!」

「あの子・・・・やっぱり本当なんだね・・・・」

「え・・・あ・・・で・でも!俺が好きなのは爽子だけなんだよ!
 別れるから!すぐにちゃんと・・・・」

「・・・・・・翔太くん・・・」



彼女に呼ばれた名前

この先の言葉は俺を
喜ばせるもの?
悲しませるもの?



「今、翔太くんの心には誰が居るの?」



俺を惑わせるもの


――何も答えれなかった



どうして・・・


そんなこと聞かれなくても一人なのに


どうして爽子だって言えなかったんだ?



「爽子・・・」



こんなにも悲しく彼女の名を紡いだ事があっただろうか?


彼女が居なくなるかも知れない現実が


――――怖くて仕方ない



「聞いて欲しいんだ・・・」

「・・・・・うん」

「俺は・・・爽子が好きで仕方ないんだ
 だけど、そんな気持ちは重たいだろ?
 いつか爽子が俺と居るのが嫌になって
 爽子と別れるのが怖くて・・・怖くて・・・
 爽子が俺から居なくなるのかと思うと・・・」

「・・・・・翔太くん・・・・・ごめんなさい」



その“ごめん”は何を意味するのだろうか?



“風早ってすげえ、彼女の事好きだよなー”

“でもさ、それって怖くない?”

“怖い?”

“そんなに彼女に依存してたらさ別れた時が怖いじゃん!”



そう、今日大学で交わされた会話


俺はその時・・・・・



心に住む人を見失ったんだ



君が居なくなる未来があるのなら


―――他の人を求めたんだ



「私がちゃんと気持ちを言わないから・・・
 不安にさせてしまって・・・・・ごめんなさい
 翔太くん・・・・・大好きです・・・」

「爽・・・」



他の人を求めた


だけど、結局はあの様だ


触れられるだけで嫌悪感を感じて
名前すら呼ばせたくない



「翔太く・・・ん・・・会いに行って・・・良い?」

「うん、会いたい・・・」



ガチャン



静かな部屋に響く音


振り替えれば



愛しい彼女



――――もう、見失わないよ










20万HITお礼SS、終わりかけの恋!
最後の一つになりました
結局、この「終わりかけの恋」は全体的に切なく出来なかったなぁ
やっぱり二人にはラブラブで居てほしいからですかね?
不完全なお話になってしまいましたが
このお話は少しだけ切ない?
ただ、嫌なヤツになっちゃったかな
お付き合い頂きありがとうございました



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