長い妄想(君☆届連載)U


□お似合い
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お似合い@



「黒沼さん」



後ろから聞こえる控えめな声に反応する


可愛い声では無い
可愛くない男の声



いや、問題はその声ではなくて
その声が発した名前に問題があるのだ


なんとなく静かになった教室でそいつは怯む事無くもう一度呼んだ



「黒沼さん、ちょっと良いかな?」

「あ、はい」



気付いた黒沼は相手を確認すれば迷いもせずに立ち上がりそちらへ向かった


知ってるヤツなのだろうか



矢野が何か聞いて顔を顰めていたけど…


黒沼が傍に行けば何やらプリントを二人で並んで見ている


そんな姿に胸が痛い



今すぐ二人を放してしまいたい


あんな近くで黒沼を感じるヤツが俺以外に居るなんて……


ふわりと漂う黒沼の香りとかをアイツも感じてるのだろうか?
ギリッと握った拳に力が入る



「あっれー?風早どうしたの?怖い顔してー!」



トイレから帰って来たジョーが
その場に似付かわしくないテンションで聞いてくるけど
俺はそれどころじゃなかった



「貞子じゃん!誰?一緒に居るヤツ」

「知らねぇよ!」



黒沼の名前が出れば応えない訳にはいかない


半ば怒鳴りながら答えても申し訳ない気持ちなんて持てそうにない



視線を外すこともできない



「それにしても………アイツの方がしっくり来るよな〜」

「ジョ、ジョーっ!」

「え?何?」



周りは必死でジョーの口を塞ぐけど俺にはちゃんと聞こえた



“アイツの方が”?

“しっくり”?



どういう意味だと聞きたいのに、その意味はわかってしまう
あまりの言葉に声が出ない



「だってさあ〜皆も思うんだろ?な?な?
 アイツ真面目そうだし隣にいても違和感無いよな〜」



“違和感”?


だったら………


俺とだったら……



「俺なら違和感あるのかよ!」



鈍器で殴られた様な衝撃を受けた


俺は……


黒沼に相応しくないのか?



「うーん、違和感ではないけど………」

「ジョ、ジョーいい加減にしろよ!良いだろ別に!」



これ以上言うな!とばかりにジョーを制止するクラスメートへ更に怒りが込み上げる



皆もそう思ってんの?


俺と黒沼じゃ……



「いいじゃん、俺………聞きたいけど?」



自分の声とは思えない程の冷たい声


自分でも自覚してる


もともと短気ではあったけど
こと、彼女である黒沼の事となると歯止めが効かなくなる事がある



特にこういう時


それは、付き合い始めてから知った事があった
それは……黒沼は意外に男子と話す事があるって事


三浦とかは知ってたけど
勉強の事とかでも黒沼に聞いたりするヤツが居たりして
それを嫌がりもせずに丁寧に教えている姿をよく見る


そんな姿を見ればいつも嫉妬する


完全なる嫉妬


独占欲が強い事を俺は初めて知った


好きなんだから仕方ないとは思うけど最近では周りからもよく言われる


“どんだけ好きなんだよ!”と


きっとこんな時の事を言ってるのだろうな


黒沼は全然気付いてないけど………



突然怒りの矛先を向けられたクラスメートは真っ青になって慌てふためいていた



「い、いや………風早っ………えっと………」

「なんだよ、はっきり言えよ」

「そうそう!風早と貞子はカレカノって感じじゃねぇんだよな!
 良いとこ………兄妹?いや、姉弟だよな!」

「はぁ!?!?」



今度はジョーの言葉に声を荒げた


兄妹?


相応しくないとかそんな問題じゃない


恋人としても見られて無いのか?



何だよ………


それ………








(はーい、風早ショック〜(笑)
まずはブリザードの風早視点から
次から話は動きますから
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